今回のムスダンの(一応の)成功でもう一つ注目すべきは、爆薬や核兵器、化学兵器などが搭載される、ミサイルの弾頭部分の再突入試験を行ったらしいという点だろう。
これまで、北朝鮮の弾道ミサイル技術が未熟だと見なされていた理由の一つに、再突入技術が無い、あるいは実証されていない、ということがあった。再突入とは、いったん宇宙空間にまで上昇したミサイルの弾頭が大気圏に再度突入することを指す。このとき、大気による空力加熱によって高温にさらされるため、弾頭はその熱に耐えられるような仕組みをもっていなければならない。この技術がなければ、核兵器も化学兵器も熱で使い物にならなくなるか、あるいは正常に動作できなくなる。
再突入技術を完全に習得するには、地上で試験を行うのは当然ながら、実際に打ち上げて試験する他なく、北朝鮮はこれまで、そうした試験を行った形跡がなかった。
ただ、今年3月には弾頭(再突入体)をロケット・エンジンの炎で炙ることで、大気圏再突入を模した試験を行ったことが発表されている。そして今回発射されたムスダンの先端には、この試験で使われたものと同じ形の弾頭が装備されていることが写真で確認でき、さらに23日付けの朝鮮中央通信では、「再突入での弾頭部の耐熱特性と飛行安全性が検証された」と報じられていることからも、今回の発射試験で弾頭の再突入の試験も行われた可能性が高い。
さらに、今回のムスダンは北朝鮮の海岸線に沿うように、北東へ向けて飛んでいる。あらかじめ船などを出して待機しておけば、回収も不可能ではない。あるいは、弾頭内に搭載された温度や加速度センサーのデータを電波で飛ばし、それを地上や船で受信する形で試験した可能性もあろう
今回の飛行で実際に再突入試験が行われたのか、そしてそれが成功したのかどうかを、第三者が確かめることは難しいが、少なくとも今後、「北朝鮮に再突入技術が無い」とは言いづらくなったのは事実であろう。