2発目は「ロフテッド・トラジェクトリー」で発射された
この日発射された2発のうち、1発目は完全な失敗と考えられているが、2発目に関しては北朝鮮のみならず、防衛省や米国のシンクタンクなどでも、成功とまでは言わないまでもそれなりの成果があったものと評価されている。
中距離弾道ミサイルというと、その飛行距離は2500~3000kmを超えるため、たった400kmで落下したということは失敗したようにも思える。しかし、日米の専門家が一定の評価をしている理由は、この2発目が高度1000kmを超える高さにまで到達したことにある。
ムスダンの最大射程は4000kmほどと考えられている。つまり普通に発射すると、日本の上空をゆうに超え、太平洋のグアムにまで到達できる。北朝鮮にとっては、このミサイルを最大能力で発射して性能を確かめる必要があり、またその威力を他国に知らしめたいとの考えもあるだろう。しかし、実戦ならまだしも、試験の段階で日本を飛び越えたり、米国の地に実際に着弾させることはもっての他である。
そこで、わざと高い角度で打ち上げることで、高度と引き換えに飛行距離を短く抑えたのでは、と見られているのである。このような飛行経路のことを「ロフテッド・トラジェクトリー」という。ちょうどボールを投げるのと同じで、遠くへ飛ばしたいなら斜め30~45度ほどで全力で飛ばすが、同じように全力で、しかし真上に向けて飛ばすと、ボールは高く上がる一方で飛距離は出ない。
今回のムスダンも、全力で飛ばしつつも飛距離を出さないことを目的に飛ばしたのであれば、高度1000km超(北朝鮮の発表では1413.6km)、飛行距離400kmというのは妥当な数字であり、北朝鮮が成功と発表し、日米の専門家が一定の評価と懸念を示したのもうなづける。