ただ、現在タイに住む日本人は在タイ日本大使館および日本の外務省発表数ではおよそ6.5万人。これら在住日本人の間ではこの罰則強化は大きな話題にはなっていない。というのも、このうちおよそ5万人が日系企業もしくは自営業に従事し、それ以外もわざわざ大使館に届け出るくらいなので正規にビザを取得している。そのため、不法滞在に関する情報はあまり関係がない。
そんなこともあり、一部の在住日本人はオーバーステイの罰則に関して勘違いをしている人も少なくない。上記の罰則はあくまでもタイのイミグレーション・オフィスへの出頭もしくは出国手続き時に発覚した場合だ。もしタイ国内で発覚した際は文字通り不法滞在者であるため、即拘束となり留置場に送られ、強制送還となる。再入国不可の期間も、超過1年未満で5年間、1年以上は10年間となる。
大手日系企業ではビザ更新日程は総務などで管理されているので問題ないが、小規模や地場企業だと個人管理になることもあり、うっかり忘れてしまうことも少なくない。しかし、それが出国時に発覚すればまだいいが、市中で警察に見つかってしまった場合、なにも整理できないまま追い出されることになる。タイ警察が職務質問のような身分確認をすることはほとんどないのだが、思っている以上に大変なことになる。
オーバーステイでの強制送還は、経験者によると自腹もしくは日本やタイ政府の立て替えで航空券を用意することになり、それが準備できるまで拘留される。タイ国外であれば行き先は自由で、空港では特別待合室で待機し、一番最後に搭乗。そこで手錠が外され、飛行機は出発するのだとか。罰則強化以前はタイ政府立て替えで航空券を買うとブラックリスト入りで数年間は入国できなかったようで、自腹の場合はとんぼ返りでも再入国ができたそうだ。
出国してしまえばとんぼ返りできるイージーさも今回問題となり、再入国に対する罰則強化に繋がった。タイも様々な面で成長を遂げており、昔の「これぞ東南アジア」といったいい加減さは過去のものになりつつある。「ルールがしっかりとすることはいいことでもあり、タイらしさもなくなることでもある」とタイ好きのいい加減な日本人たちは嘆いている。
<取材・文・撮影/高田胤臣(Twitter ID:
@NaturalNENEAM)