1990年代半ばまでは一般的な日本人旅行者が、無意味にタイ国内に留まることはなかった。しかし、低予算でユーラシア大陸を横断する日本のテレビ番組が大人気となり、貧乏旅行をするバックパッカーが急増。当時バンコクが世界で最も航空券が安い場所だと言われ、90年代後半に世界中から貧乏旅行者が集まるカオサン通りといった聖地までが誕生し、日本人パッカーたちも大量に押し寄せてきたのだ。
大半のパッカーにとってタイはあくまでも通過点であったが、居心地のよさ、物価の安さなどもあって一部の人たちは長期滞在するようになった。そんな彼らを当時は沈没、今は外こもりと呼んだ。
タイはビザなしの入国の場合、空路と陸路では半月も滞在許可期限が違う。これも不良外国人が無闇に長期滞在できないようにするための対策のひとつ
タイ政府にとって観光産業は大きな収入源である。外国人にたくさんの金を落としていってほしいのが本音だ。ところが当時の沈没組は100~200万円を持ってはくるができるだけ使わず、いかに長く居続けるかを考えている者ばかり。最近の外こもりはネットビジネスやオンライン投資で金を稼ぐものの、観光客ほど派手な金の使い方はしないし、稼ぎに対する納税もタイではしない。
こういった外国人はタイ政府にしてみれば不良外国人になる。ただ、この場合は不良債権外国人と呼ぶべきで、これとは別に本当に不良な外国人も稀にいる。例えば、本国で罪を犯し指名手配されている者が紛れているのだ。今年5月1日には医療費の還付金名目の詐欺事件で国際手配されていた日本人男性がタイにおいて逮捕されている。タイに来て詐欺師になる日本人もときどき見かける。
タイ政府はそういった不良外国人たちを一掃するためにビザ発給を厳格化した。各国にあるタイ大使館で運用は違うが、観光ビザでありながら在職・在学証明の提出を求める場合もある。観光ビザを取得すれば60日間、およびタイ国内での延長で合計90日間の滞在が可能になる。職のある人がそんな長い間タイを旅するのは日本の常識では考えられないが、そういったおかしな条件がつけられるなど、ビザの取得は容易ではなくなっている。
そのため、最近ではタイ人と偽装結婚して婚姻関連のビザを取得して長期滞在を目論む外国人も出始めているという。