イーロン・マスクのロケットがまた快挙、過去最高難易度での着地に成功

着地したロケットを載せてフロリダ州の港へ向かおうとしている船 Photo by SpaceX

挑戦を後押しし失敗を許容する米国の宇宙開発

 スペースXはまた、今月下旬にタイの通信衛星「タイコム8」の打ち上げを予定しており、さらに今後、2~3週間おきにファルコン9を打ち上げると共に、回収試験も続けたいという見通しを発表している。また前回、4月に着地に成功した機体は、早ければ6月にも打ち上げに使いたいとも明らかにされており、今後は再使用の試験も始まることになるだろう。  もっとも、ロケットを回収して再使用することで、本当に信頼性(ロケットの成功率)を落とさずに低コスト化が達成できるかどうかは、まだ実証されたわけではない。また今回のような急ブレーキをかける着地方法は、機体に少なくない負荷がかかるはずであり、もしかすると再使用に若干の手間がかかることになるかもしれない。  ただ、そうしたことを学ぶには、何をおいてもとにかく実際にやってみる他ない。また着地の成否が打ち上げの成否に直接かかわるわけではないものの、着地に失敗すれば「着地のために費やしている労力を、打ち上げを成功させるために使うべきだったでは」といった意見は当然出てくる。昨年、スペースXがロケットの打ち上げに失敗したときにもそうした声は少なからず聞こえた。しかし、同社がさまざまなリスクを承知で、そして実際に何度も失敗を重ねながらも、こうした挑戦を続けているのは驚くべきことである。  また、ロケットの発射場を提供している米空軍、ロケットの飛行に関する安全審査を行うFAA、さらにロケットにとってのお客となるNASAなどの機関や衛星運用会社なども、スペースXの挑戦を後押ししている。米国の宇宙開発では、こうした民間による革新的な技術への挑戦を、実際の打ち上げの中で実施できる体制ができあがっている。それも今に始まったことではなく、米国では1980年代の後半ごろからすでにこうした動きがあり、これまでいくつものベンチャーが立ち上がっては消え、生き残った数少ない会社のひとつがスペースXである。  たとえこの先、ファルコン9のような着地・回収と再使用の方法が、技術的に、あるいはコスト的に成立しないことがわかったとしても、こうした挑戦を後押しする米国の宇宙開発の風土は、別の技術、別の方法を産むきっかけとなるだろう。 <文/鳥嶋真也> とりしま・しんや●宇宙作家クラブ会員。国内外の宇宙開発に関するニュースや論考などを書いている。 Webサイト: http://kosmograd.info/about/ 【参考】 ・JCSAT-14 Mission in Photos | SpaceX(http://www.spacex.com/news/2016/05/05/jcsat-14-mission-photos) ・http://www.spacex.com/sites/spacex/files/spacex_jcsat_press_kit_final.pdf(※pdf注意) ・JCSAT-14 MISSION | SpaceX(http://www.spacex.com/webcast) ・Falcon 9 launches with JCSAT-14 – lands another stage | NASASpaceFlight.com(https://www.nasaspaceflight.com/2016/05/falcon-9-jcsat-14-launch/) ・Falcon 9 succeeds in middle-of-the-night launch and landing – Spaceflight Now(http://spaceflightnow.com/2016/05/06/falcon-9-succeeds-in-middle-of-the-night-launch/
宇宙開発評論家。宇宙作家クラブ会員。国内外の宇宙開発に関する取材、ニュース記事や論考の執筆などを行っている。新聞やテレビ、ラジオでの解説も多数。 著書に『イーロン・マスク』(共著、洋泉社)があるほか、月刊『軍事研究』誌などでも記事を執筆。 Webサイト: КОСМОГРАД Twitter: @Kosmograd_Info
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