打ち上げ時の長時間露光写真。この光の線の先からロケットは帰ってきた Photo by SpaceX
ファルコン9にとって、この余裕が少ない中での着地は今回が2回目だった。1回目は今年3月5日に実施されたが、やはり余裕が少ないために降下する機体を十分に制御、減速しきれず、船の甲板にたたきつけられ、大きく破損した。
ファルコン9の着地方法をもう少し詳しく書くと、分離後の第1段はまず、地上との水平速度を落とし、場合によっては地上へ向けてUターンするため、進行方向とは逆方向にエンジンを噴射する。次に大気圏に再突入する際の速度と、それによる過熱を抑えるために噴射。そして最終的に地上や海上の船に軟着地するための噴射を行い、着地する。
このうち再突入時の噴射を省くと機体が高熱にさらされてしまい、また着地時の噴射を省くと地上に叩きつけられるため、余裕が少ない場合に省かれるのは水平速度を落とすための噴射である。しかし、これを省くと機体を分離したときにもっているエネルギーを保ったまま、大気圏に再突入し、地上へ突っ込んでくることになり、機体は通常より高温、そして高速になる。その状態の機体を、海上の船に目がけて自動操縦で制御し、なおかつ船の甲板に軟着地させるのは並大抵のことではない。