ファルコン9ロケットの打ち上げ Photo by SpaceX
現在運用されているすべてのロケットは、基本的に第1段、第2段……と機体が複数に分かれており、まず第1段で加速し、燃料を使い切ると第2段と分離。第2段はそれまで第1段が稼いできた速度と高度を受け継いでさらに加速し、一方の第1段はそのまま地球に落下し、地上や海上に落として処分するという飛び方をしている。
ファルコン9ロケットの回収方法は、これまで落として捨てていた第1段機体を、うまく制御して、地上や海上の船に降ろすというものである。
ただ、一口にロケットが落ちてくるといっても、どういう衛星を、どういう軌道に向けて打ち上げるかによって、その落ち方は変わってくる。
これまでに成功している2回の着地では、(もちろんそれ自体は難しい技術ではあるものの)比較的軽い衛星を地球に近い軌道に向けて打ち上げた。そのため、ロケットの速度はそれほど高くなく、また着地するのに必要な十分な余裕を残すことができ、ロケットは降下する速度やコースを十分に制御しながら着地することができたのである。
しかし、こうした着地しやすい条件になる打ち上げの機会はあまり多くない。打ち上げの需要のうち、少なくとも半分以上は、より重い衛星を、より遠くまで飛ばすような打ち上げ、つまりロケットの速度が高く、残燃料の余裕も少なくなる条件の厳しいものが占めている。速度が高いと制御は難しくなり、また使える燃料も少ないため、余裕をもって速度を落とすこともできない。たとえるなら、低速走行からブレーキをやんわり踏みながら停止線にぴたりと止まるのと、高速走行から停止線直前でブレーキを一気に踏み込んで止まるぐらいの違いがある。
ただ、逆に言えば、この余裕が少ない中でも確実に回収することができれば、それだけ回収できる頻度が上がり、ロケットを再使用できる回数が増え、打ち上げ毎のコストダウンにつながる。スペースXが目指す打ち上げコスト100分の1の実現のためには、この回収頻度を上げることが大きな意味を持つのである。