スペースXの「ファルコン9」ロケット。そのままでも十分安価だが、写真のようにロケット回収、そして再使用することで、さらなる低コスト化を図ろうとしている Photo by SpaceX
そこで現在、欧州は「アリアン6」という新型ロケットの開発を行っている。アリアン6は、現在運用中の「アリアン5」ロケットよりも打ち上げ能力を若干向上させた上に、価格は半額という目標を立てている。正確な価格がどれくらいになるかは不明だが、スペースXのファルコン9と比べても、十分に競争力のある価格になる可能性は高い。
ただ、今回の記者会見で同社のステファン・イズラエルCEOは、「そもそもファルコン9とは市場で競合しないだろう」という見方を示した。スペースXはまず、米国内の需要(NASAの衛星や有人宇宙船、軍事衛星の打ち上げ)に目を向けており、またスペースX自身が4000機の衛星を打ち上げてインターネット通信サービスを展開する計画もある。さらに火星に宇宙船を飛ばすという構想もある。つまり商業打ち上げ以外の分野で、すでに相当な数のファルコン9の打ち上げを考えているということになる。
イズラエル氏はこのことから、「アリアンスペースは火星に行くということは考えておらず、自社で大量の衛星を打ち上げるという計画もない。たしかにファルコン9は米国内外の商業打ち上げも狙っており、そこで競合することはあるだろうが、(ファルコン9は前述の他の打ち上げで相当数が使われることから)市場が重なることはないだろう」と語った。
また、ファルコン9は旅客機のように機体を再使用することで
コストを抑えようとしているが、これについてもイズラエル氏は「彼らはこれまでに2機の回収には成功しているが、他の回収は失敗に終わっている。また回収に成功した機体の再使用はまだ行われておらず、再使用される機体の信頼性も不明である。戻ってくるためには追加の推進剤を積まなければならないし、再使用には整備も必要になる。つまり再使用で本当に安くなるのかはわからない」と語り、否定的な見方をしている。