2030年代のロケット業界はどうなる? 業界リーダーの欧・アリアンスペースはこう見る

会見するステファン・イズラエル代表取締役会長兼CEO

変革するアリアンスペース

 アリアンスペースは設立以来、まず同じく商業打ち上げ市場に投入されていた米国のロケットとの競争があり、続いて2000年代には徐々に市場に参入したロシアやウクライナ、中国のロケットとの競争を迎えた。ロシアやウクライナなどのロケットは、アリアン・ロケットと比べ、一部では高性能な部分もあり、そして何より安価ではあったものの、アリアンスペースは対等以上に戦い、市場はアリアンが半分、もう半分をロシアのロケットが占めるという状態にあった。  そして近年、米国の民間企業スペースXが、さらに安価なロケット「ファルコン9」を開発し、市場に投入した。以前お伝えしたように、ファルコン9は新参者ではあったものの、徐々に市場からの信頼を勝ち取り、2014年にはロシアのロケットが占めていたシェアを奪い、アリアンスペースとファルコン9で半々、という状態になった。  こうした市場の変化を受けて、アリアンスペースも変革を迫られた。  アリアンスペースの社是は、欧州の宇宙輸送の自立性を確保すること、つまり欧州が自由に使えるロケットを確保することにある。欧州各国は偵察衛星や航法衛星など、安全保障にかかわる重要な衛星を保有しており、また地球観測衛星や科学衛星、惑星探査機などもある。たとえ他国により安く、より性能の高いロケットがあっても、それらに頼ることなく、自分たちのロケットで、好きなとき、好きな時間に衛星を打ち上げられる体制を維持することは、欧州全体にとって大きな利益となる。この考えかたは、ロケットを保有する他国、米国やロシア、中国、そしてもちろん日本でも、基本的にはまったく同じである。  ただ、そうした政府機関が保有、運用する衛星(政府系衛星)の需要は少なく、年に数回しか打ち上げの機会が無い。年に数回という少なさでは、ロケットを量産数も限られ、技術者の育成もできず、信頼性も上がらない。そこで、定期的な打ち上げができるだけの需要を作り出すため、欧州の外に目を向け、他国の企業などの衛星を打ち上げる商業打ち上げ市場へ参入した。  つまりアリアンスペースにとって、商業打ち上げ市場で勝つことは目的というよりも、欧州の衛星を打ち上げ続けるために必要な手段なのである。そのため、アリアンスペースはスペースXを完全に打ち負かす必要はないものの、欧州のロケットの自律性を確保し続けることができ、なおかつ同社が赤字にならない程度にはシェアを維持し続けなければならない。
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ライバル、スペースXとどう対抗するか
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