2030年代のロケット業界はどうなる? 業界リーダーの欧・アリアンスペースはこう見る

液体メタンを使うロケット・エンジン「プロメテ」 Photo by CNES

2030年代には液体メタン・エンジンでさらなる低コスト化

 しかしアリアンスペースは、ファルコン9が今よりさらに低価格になるかどうかにかかわらず、アリアン6をさらに安価にする必要性があると強調する。イズラエル氏は「顧客へのヒアリングの結果、次世代のロケットは、より安価に、より短い期間で打ち上げられるようになってほしいという声を聞いた。市場のニーズは次々と変わるものだが、2020年代のアリアン6はそれに対応できるものだと考えている。さらに、目は将来を見据えており、さらなるコストダウンを実現できるロケット・エンジン『プロメテ』の開発に着手している」と語る。  この「プロメテ」ロケット・エンジンは、液体メタンを使う。現在運用中のアリアン5や、開発中のアリアン6では、燃料に液体水素を使っている。これを酸化剤である液体酸素と混ぜて燃やし、そのガスを噴射してロケットを飛ばす。  液体水素を燃料に使うと、ロケットの効率(燃費のようなもの)を大きく高めることができる。しかし、液体水素の沸点は-252.6度Cと極めて低温で、さらに分子量が小さいためわずかな隙間からでも漏れやすいなど、扱いは非常に難しい。一方メタンは、効率は液体水素よりも劣るものの、推力(パワー)が出しやすく、また液体水素よりも沸点が高いため扱いやすく、価格も安い。つまりトータルで見ると、効率の低さを補って余る、優れたロケット・エンジンにできる見込みがある。  メタンのもつ利点は以前より認識されており、これまでさまざまな国で液体メタン、あるいはメタンを主とする液化天然ガスを使うロケット・エンジンが研究・開発されているが、技術的にさまざまなハードルがあったことで、実用化されたことはない。ただ、ここ最近になり、ようやくものになりつつあり、米国やロシアでは実用化に向けた開発の最中にある。

ステファン・イズラエル代表取締役会長兼CEO(中央)、ジャック・ブルトン取締役営業担当上級副社長(左)、高松聖司・東京事務所代表(右)

 イズラエル氏によれば、プロメテは従来のエンジンと比べ、約10分の1のコストダウンを目指すという。ロケットの部品や燃料などのコストの中で、エンジンは最も比率が大きく、約半分を占めているため、そのエンジンのコストを10分の1まで削ることができれば、ロケット全体のコストも約半分にすることができる。  こうしたアプローチは、ロケットを再使用することで低コスト化を狙うスペースXなどとはまったく異なる。イズラエル氏は、「我々は他に追随するような、真似をするような会社ではない。これまでの実績、マーケティングに基づいた独自戦略を掲げるのが我が社だ」と延べ、自信をアピールした。 <取材・文/鳥嶋真也> とりしま・しんや●宇宙作家クラブ会員。国内外の宇宙開発に関するニュースや論考などを書いている。 Webサイト: http://kosmograd.info/ 【参考】 ・Arianespace Japan Week 2016: Arianespace fetes 30 years of success in Japan – ArianespaceArianespace Japan Week 2016: Arianespace fetes 30 years of success in Japan – ArianespaceAriane 6 / Launch vehicles / Launchers / Our Activities / ESAAriane | PROMETHEUS engine, an evolution towards European launch systems
宇宙開発評論家。宇宙作家クラブ会員。国内外の宇宙開発に関する取材、ニュース記事や論考の執筆などを行っている。新聞やテレビ、ラジオでの解説も多数。 著書に『イーロン・マスク』(共著、洋泉社)があるほか、月刊『軍事研究』誌などでも記事を執筆。 Webサイト: КОСМОГРАД Twitter: @Kosmograd_Info
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