ギリシャのユーロ離脱「Grexit」は起こり得るのか? 米独ロの駆け引きがカギ

 更に、ギリシャが非常に厳しい状況にあることを示すものとして同国のGDPの推移がある。2008年からギリシャのGDPは26%後退している。失業率も27%を前後を記録している。即ち、ギリシャは1930年代の世界恐慌に匹敵する経済事情にあるということだ。昨年7月に、J.P.モルガンは、<ギリシャが今年ユーロ圏から離脱する可能性は60%とし、残留の可能性は15%>と予想しているほどだ。(参照「El Economista」 )

チプラス政権の最大の障壁「年金改革」

 チプラス政権が構造改革で直面している一番難しい問題は年金改革である。同政権が誕生して既に4回のゼネストが行なわれた。その抗議で一番に取り上げられたのが年金改革への不満である。そして公務員の雇用削減にも反対している。ギリシャの<52%の世帯で年金が収入の柱になっている>という。しかしそれは逆に<政府にとって歳出の15.7%を占める>ことになっており、その財政負担が深刻になっている。しかし、シリザが政権に就けたのは多くの年金受給者からの票が集まったからだ。年金改革が容易に運ばない理由がそこにあるという。スペインでは<この負担比率は11.8%>である。(参照「El Mundo」)。  ギリシャが抱えている負債の<70%はIMFを含めたユーロ債権国の負担による>もので、ユーロ債権団はこれまで第1次支援から第3次支援まで厳しい交渉の末に常にギリシャがユーロ圏に留まることを基本に交渉が行なわれた。債権団で一番影響力のあるドイツはギリシャの負債の減免は絶対にしないという姿勢であり、またショイブレ財務相はギリシャの一時的であるにせよユーロからの離脱を推めている。しかしメルケル首相は常にギリシャを残留させる姿勢で交渉している。 (参照:「BBC」)
次のページ
Grexit、それはギリシャと中ロの接近を意味する
1
2
3
バナー 日本を壊した安倍政権
新着記事

ハーバービジネスオンライン編集部からのお知らせ

政治・経済

コロナ禍でむしろ沁みる「全員悪人」の祭典。映画『ジェントルメン』の魅力

カルチャー・スポーツ

頻発する「検索汚染」とキーワードによる検索の限界

社会

ロンドン再封鎖16週目。最終回・英国社会は「新たな段階」に。<入江敦彦の『足止め喰らい日記』嫌々乍らReturns>

国際

仮想通貨は“仮想”な存在なのか? 拡大する現実世界への影響

政治・経済

漫画『進撃の巨人』で政治のエッセンスを。 良質なエンターテイメントは「政治離れ」の処方箋

カルチャー・スポーツ

上司の「応援」なんて部下には響かない!? 今すぐ職場に導入するべきモチベーションアップの方法

社会

64bitへのWindowsの流れ。そして、32bit版Windowsの終焉

社会

再び訪れる「就職氷河期」。縁故優遇政権を終わらせるのは今

政治・経済

微表情研究の世界的権威に聞いた、AI表情分析技術の展望

社会

PDFの生みの親、チャールズ・ゲシキ氏死去。その技術と歴史を振り返る

社会

新年度で登場した「どうしてもソリが合わない同僚」と付き合う方法

社会

マンガでわかる「ウイルスの変異」ってなに?

社会

アンソニー・ホプキンスのオスカー受賞は「番狂わせ」なんかじゃない! 映画『ファーザー』のここが凄い

カルチャー・スポーツ

ネットで話題の「陰謀論チャート」を徹底解説&日本語訳してみた

社会

ロンドン再封鎖15週目。肥満やペットに現れ出したニューノーマル社会の歪み<入江敦彦の『足止め喰らい日記』嫌々乍らReturns>

社会

「ケーキの出前」に「高級ブランドのサブスク」も――コロナ禍のなか「進化」する百貨店

政治・経済

「高度外国人材」という言葉に潜む欺瞞と、日本が搾取し依存する圧倒的多数の外国人労働者の実像とは?

社会