ニュー・シェパードの宇宙船に乗り込もうとする宇宙旅行者(想像図) Photo by Blue Origin
ベゾス氏やマスク氏らによって、はたして宇宙旅行は現実のものになるのだろうか。現時点では2つの予想ができる。
ひとつは、サブオービタル飛行であれば実現するだろう、ということである。サブオービタルの宇宙飛行はブルー・オリジン以外にもいくつかが運航を計画しており、そのうちのいくつかが、数年以内に実際に運用に就くことはほぼ間違いない。
ただ、サブオービタル飛行では、青い地球を眺めたり、無重力状態を体験できる時間は5分ほどしかない。また1回の飛行あたりの運賃は数千万円から数百万円と、海外旅行よりもはるかに高くなると予想されている。一生の思い出になるとはいえ、わずか5分のためにそれだけの金額を出したいかどうかは、人によってさまざまだろうが、運用が続けられる中でより安くなり、参加する人は徐々に増えていくことになろう。
もうひとつの予想は、軌道への飛行も可能にはなるだろうが、その金額は一般人には手が出せないだろうということである。
現在、ロシアの宇宙船で宇宙旅行に行こうとすると、約30億円から60億円ほどを支払わなくてはならない(それでも累計8人がすでに宇宙旅行を体験している)。スペースXが開発している「ドラゴン2」という宇宙船は、運用開始当初は約20億円ほどになるというが、それでも十分に高価である。
ドラゴン2も、それを打ち上げるロケットも再使用が可能であるため、いずれ金額は下がるだろうが、それでも億単位の金額を出さなくてはならないだろう。たとえブルー・オリジンが同じ宇宙船の軌道への打ち上げに参入したとしても、軌道まで行くためのエネルギーや、ロケットと宇宙船の再使用で節約できる金額などに大きな差は生まれにくいため、スペースXと同じぐらいの価格しか期待できない。
残念ながら、私たち一般人が海外旅行に行く感覚で宇宙に行ける時代がやってくるのは、まだ当分先のことになるのは間違いない。しかし、ベゾス氏やマスク氏らがロケットや宇宙船を打ち上げるたびに、その未来が少しずつ近づいてきていることもまた、間違いないだろう。
【参照】
・Blue Origin |
Pushing the Envelope
・Blue Origin |
Launch. Land. Repeat.
・Blue Origin |
Blue Origin Makes Historic Rocket Landing
・Blue Origin |
Our Approach to Technology
・Blue Origin |
The Astronaut Experience
<文/鳥嶋真也>
とりしま・しんや●宇宙作家クラブ会員。国内外の宇宙開発に関するニュースや論考などを書いている。
Webサイト:
http://kosmograd.info/about/