宇宙船部分は上空でロケットから切り離され、パラシュートで帰還する。人が乗れるように造られてはいるが、これまですべて無人で打ち上げられている Photo by Blue Origin
ニュー・シェパードは先端に、カプセル型の宇宙船を搭載することができるようになっている。この宇宙船は最大6人の乗客や実験装置などを積むことができ、約4分間の宇宙旅行や、無重力環境を利用した実験などを行うことができる。ベゾス氏によると、2年以内にも同ロケットを使った宇宙観光や宇宙実験をビジネスとして展開したいとしており、すでにニュー・シェパードの量産も始まっている。
ただ、ここで注意しなければならないのは、ニュー・シェパードは地上からまっすぐに上昇して宇宙の”端”に達した後、そのまままっすぐ降下することしかできない、という点である。こうした飛行のことを「サブオービタル飛行」という。
私たちが「宇宙飛行」と聞いてまず思い浮かべる、スペースシャトルや国際宇宙ステーションなどは、地球のまわりを回る「軌道」に乗っている。この軌道へ人工衛星や宇宙船を送り込む(オービタル飛行をする)ためには、サブオービタル飛行とは比べものにならないほど莫大なエネルギーが必要で、ニュー・シェパードの能力ではまったく足らない。
一方、イーロン・マスク氏率いるスペースXが開発した「ファルコン9」ロケットは、軌道へ向けて大型の人工衛星や宇宙船を飛ばすことができ、実際にこれまで22機が打ち上げられている。ファルコン9もまた、垂直離着陸と再使用ができる能力をもっているが、今のところ着陸は2度達成したものの、再使用はまだ行われていない。
つまり、ベゾス氏のニュー・シェパードは、3回の再使用に成功した点で一日の長があるが、そもそも人類の宇宙進出のために必要となる、軌道まで宇宙船を飛ばせる能力を持っていない。一方、マスク氏のファルコン9は軌道まで飛ぶ能力を持っているが、再使用にはまだ成功していない。やや強引な見方をすれば、お互い「一勝一敗」とも言えるが、正確には同じ土俵にすら立っていない。
ただ、マスク氏は今後もファルコン9の着陸試験を繰り返し、さらに早ければ今年中にも、着陸したロケットを整備し、再使用したいという展望を語っている。
一方のベゾス氏も、現在ファルコン9に近い能力をもつ大型ロケットの開発を進めており、2019年ごろに初打ち上げが行われるという。このロケットはまた、ニュー・シェパードの技術を活かし、再使用が可能なロケットになるとされる。そう遠くないうちに、マスク氏率いるスペースXと、ベゾス氏率いるブルー・オリジンが、同じ土俵の上で、ロケットの再使用回数や成功率などをめぐって切磋琢磨することになり、両者の競争はさらにおもしろいものになるだろう。
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イーロン・マスク氏率いるスペースXが開発した「ファルコン9」ロケット。人工衛星や宇宙船を地球をまわる軌道まで飛ばせる上、ロケットの一部を着陸させ、再使用することもできる Photo by SpaceX
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ブルー・オリジンが現在開発している大型ロケットの想像図。ファルコン9とほぼ同じ規模のロケットになるとみられている Photo by Blue Origin