コロナ禍で利用時間が増えるスマホ。ストレスを溜めない付き合い方とは

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(adobe stock)

 外出を控える生活を送っていると、仕事でもプライベートでも外界とのコミュニケーション手段はインターネット頼みになる。  デジタルツールの中でも、大きさ、軽さ、機能面でスマホの利便性の高さは群を抜いており、仕事でも私生活でも欠かせない。  APP ANNIEの「モバイル市場年鑑2021」調査によると、2020年の日本人の1日あたりの平均スマホ利用時間は3.7時間で、前年の3.3時間よりも増加している。  しかしスマホの使い方によっては、心身に悪影響が及ぶことも。「寝転がりながら操作をしてしまい、体が痛くなることがある」や「連絡の数が増えてスマホがいつも気になって落ち着かない」など、スマホの利用時間が増えたことで疲れを訴える声もある。  コロナ禍でスマホと上手に付き合うにはどうすればよいのか。そのヒントは、脳の作りを知ることにある。  

人間の脳はデジタル社会に適応していない

 スマホがあれば、パソコンがなくてもインターネットにアクセスが可能だ。どこにいてもニュースやウェブサイトを見たり、メールやチャットの送受信をしたりできるほか、アプリ経由で料理のデリバリーや買い物もでき、生活にはなくてはならないツールとなっている。  しかしスマホがいくら便利でも、冒頭で書いたように使い過ぎはよくない。昨年6月にロート製薬が発表した調査では、日常的に在宅勤務を取り入れている人ほど、スマホを含むデジタル機器の利用時間が伸びていることが示されている。「5時間以上伸びた」人が22%もおり、こうした人たちほど目の疲れを訴えやすい。  このように家で過ごすことが増え、以前よりもスマホを手に取る生活になったからだろうか。昨年11月発売の書籍、『スマホ脳』(新潮新書)が売れている。同書が扱うのは、睡眠不足や集中力の低下、うつなど、スマホの過剰な利用が心身に及ぼすネガティブな影響の数々だ。  著者でスウェーデンの精神科医でもあるアンデシュ・ハンセン氏は、こう断言する。 「人間の脳はデジタル社会に適応していない」  一体どういうことなのか。  まずは、脳の作りと現代社会のミスマッチについて『スマホ脳』の内容を参考にしながら説明する。

今でも人間の脳は、サバンナでの暮らしに対応している

 アンデシュ・ハンセン氏によれば、現代人の脳は狩猟生活を送っていた時代の生活に適応したままで、同書は「脳はサバンナで暮らしているようなもの」と表現している。というのも、人間が地球に現れてから99.9%の時間を狩猟と採集生活に費やしてきたからだ。  狩猟や採集生活を送っていた時代は、今から何万年も前のこと。当時の人間は、簡素な住宅に住んで移動を繰り返していたし、食料を手に入れるために命がけで狩りに出ていた。こうした生活環境では飢餓や干ばつ、殺害などで亡くなる人が多く、現代の主な死因であるガンや心臓血管疾患で亡くなる人は少ない。そもそも平均寿命は、30歳足らずだった。  人間はこの数千年で生活様式を大きく変え、現代では整備された都市部で住むことが多くなった。狩りをしなくても食料も手に入るため、サバンナに足を踏み入れない限り、ライオンのような猛獣に出くわして命の危険に直面することはない。  しかし進化の過程全体から見れば、数千年という期間はわずかにすぎない。ましてやスマホやパソコンを日常生活で使うようになった過去数十年は、ほんの一瞬だ。脳がデジタル化を含め、現代社会に上手に対応できないのは当然だ。
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長期間に及ぶストレスが睡眠を妨げる理由
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