モンゴル・中国・ミャンマー以東の東部アジア・大洋州諸国では、米欧中東などに比して百万人あたりの感染者数が概ね1/100を基本としており、結果として人口あたり死亡数も1/100を基本としています。このことは、3月頃から東アジアの謎と指摘されてきており、筆者も2月末頃からこの謎を指摘してきています。筆者はこれを「
謎々効果」と名付けています。”
Factor X”と名付けている人たちもいますが、中身は同じものです。
ここで謎々効果域内での比較と米欧との比較をしてみましょう。
謎々効果域内では、日韓共に死亡率中位群を占めていたのですが、第三波エピデミックは両国共に深刻で、既にインドネシア、ミャンマーに続き
日本、韓国が三位争いをしている状態です。
一方で米欧と比較すると日本、韓国共に原因は不明であるが感染しにくいという謎々効果の結果、米欧諸国に比して1/20程度の百万人あたり死亡数で済んでいます。但し致命率(CFR*)は、日韓共に米欧の標準的な値と変わりませんので、
何らかの理由で感染率が米欧並みに高くなれば謎々効果は消えてしまいます。
〈*CFR(Case Fatality Rate)は、医療と防疫で一般に用いられるもので、診断付き死亡者数を診断付き感染者数で割ったものである〉
東部アジア・大洋州(謎々効果域内)における100万人あたり日毎死亡数の推移(ppm線形Raw DATA) 2020/01/23-2020/12/27
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米欧諸国とインドネシア、日本、韓国、台湾の100万人あたり日毎死亡数の推移(ppm線形7日移動平均)2020/02/13-2020/02/27
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IHME(保健指標評価研究所)など海外研究機関による予測と評価
12/23にIHMEによる長期予測が更新されました。本邦は、現状維持(ワクチン接種あり)で2021/04/01までに4万9千人が死亡するという悲観的な予測となっています。今回の更新では、これまで2021/04/01迄に千人〜二千人程度であった韓国での累計死亡予測が1万9千人と大幅に引き上げられたことがとくに目を引きます。
IHMEによる日本の累計死亡数長期予測(人 線形)
累計死亡数約4万9千人は、ワクチンあり現状維持シナリオの場合
橙:ワクチン無し現状維持、赤:ワクチンあり何もしない、紫:ワクチンあり現状維持、黄緑:ワクチンあり全員マスク、青:迅速ワクチンで現状維持
IHME
IHMEによる日韓中台の10万人あたり累計死亡数長期予測 (10ppm線形)
ワクチン接種あり、現状維持シナリオである
中台は、灰色破線でX軸に張り付いている
IHME
あまり知られていませんが、韓国はこれまでにK防疫体制がたいへんな成果を挙げてきたためか
ワクチンの調達で大きく遅れています。青瓦台(大統領府)が人口の8割強に相当する4,400万人分を確保するとしてきたワクチンは、アストラゼネカとの契約分75万人分しか確保されていないという報道が最近なされています。韓国政府は、この報道を明確には否定できておらず、年末の韓国社会を揺るがしています。
K防疫体制の効果が揺らいでいる韓国では、ワクチン供給体制についてたいへんな問題となっており、韓国政府も対応に追われていますが、
透明性の欠如を筆者は感じます*。
〈*
[社説]「ワクチン議論」で核心をつかず的外れな答えをする韓国政府 2020/12/24 hankyoreh japan〉
IHMEは、12/16更新の予測までは、韓国ではK防疫体制が有効に機能しており、日本に比較して一桁死者は少ないと評価してきましたが、12/23に死亡者数の予測を大きく引き上げました。一方で韓国ではK防疫体制強化によるエピデミックの衰えが見えてきていますので今後の如何によってはまた評価が大きく変わる可能性があります。
本邦については、世界唯一・
ジャパンオリジナルの検査抑制によって既に統計自体が壊れており例えば重要指標である検査陽性率は、全く無意味な数字を出し続けています。これは、分母に相当する検査数を主として分子にあたる陽性者数も厚生労働省による不作為でデタラメになっているからです*。
〈*本邦では、行政検査、医師会検査、自由検査に分かれているが、医師会検査では保健所が検査陽性者しか受け取らず、膨大な検査陰性者のデータは事実上捨てられている。また自由検査に至っては、検査陽性者が医師に診断を受けた上で医師が保健所に報告しない限り統計に組み込まれない。結果として陽性率は極端な過大評価となり、感染者も無症状感染者を中心に、せっかく検査で判明しても大量に統計から漏れることとなっている〉
現在、検査業者や一部自治体などの独自の発表では、東京都区部での検査陽性率は1〜2%であり、これは社会の実態をもとにした諸外国との比較でも妥当です。検査陽性率が公式統計の7%前後でなく1〜2%と言うことは、吉報ではありますが同時に本邦のCOVID-19統計は、完全に壊れていて、よく分からない数字を吐き出し続けているという事を意味しており極めて深刻です。
このことはIHMEなどの海外研究機関にはとっくにバレており、極めて厳しい評価となっています。
日本の日毎新規感染者数(実測値)と海外機関が推測する真の日毎新規感染者数
2020/12/12現在、実測値(黒)に対し、IHMEは3.4倍、ICLは8.6倍と評価している。
IHMEは、11月のエピデミックSurge減速を評価に取り込み済みである
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韓国の日毎新規感染者数(実測値)と海外機関が推測する真の日毎新規感染者数
2020/12/12現在、実測値(黒)に対し、IHMEは1.3倍、ICLは2.7倍と評価している。
IHMEは、韓国では検査により感染者をほぼ掌握していると評価していることになるが、12/23に大きく悲観的に評価を変えており今後の推移が注目される
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台湾の日毎新規感染者数(実測値)と海外機関が推測する真の日毎新規感染者数
2020/12/12現在、実測値(黒)に対し、IHMEは0.7倍と評価している。ICLは、国内発生分のみ評価している様で12/12まで0人が続いて居る
IHMEは、台湾では感染者を検査で完全に掌握していると評価していることになる
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今後本邦では、忘年会効果、クリスマス効果、年末年始効果、帰省効果、連休・成人式効果、共通試験効果、入試効果とエピデミックを大きく増進する
スーパースプレッダ・イベントが目白押しです。さらに感染力が段違いに強力な変異ウイルスが全世界に蔓延しつつあります。
このため
積極的な公的介入がなければ、既に強い圧力をウィルスから受けている医療機関はますます圧迫されて行くこととなります。医療がウィルスに圧倒されれば、社会は急速に機能を失い大きな犠牲が出ることとなります。その先例として旭川市と大阪府市が注目されます。
今年の年末年始は、家で同居家族のみと静かに祝うことが市民に求められますが、同時に政府には、これまでのジャパンオリジナル・人類唯一無二の国策エセ科学・エセ医療デマゴギーを全面撤回し、関係者を「人道に対する罪」で、厳重処罰の上でまともな防疫政策を年末年始抜きで構築することが求められます。
◆コロラド博士の「私はこの分野は専門外なのですが」新型コロナ感染症シリーズ35:迫り来る地獄6
<文/牧田寛>