今、まさに任売が増えつつある。任売物件を専門に扱う、明誠商事代表の飛田芳幸氏は話す。
「例年は任売の相談件数は月に20件ちょっとでしたが、今年の8月以降は30~40件に増えました。コロナで収入が減って、貯金や特別定額給付金でしのいでいたものの、経済状況に改善が見られず、さらに夏のボーナスも大幅減になってローンが払えなくなった人が多いようです。特に、観光産業や飲食業、エンタメ関係でお仕事をされている30~40代の方が目立ちます。
ローンの滞納がない段階から、早めに任売を考える人も少なくありません。物件の所在地としては、東京、神奈川、千葉、あとは大阪や東北あたり。12月はボーナス支払い月ということもあり、さらに相談件数が増えるのでは」
任売物件の購入にあたっては、一般の物件と同じく不動産業者を介することになるが、購入者にとってはどんな魅力があるのか。
「任売物件の最近の傾向としては、築後、5~10年くらい経過した
比較的新しい物件が多いですね。中古で家を探している方にとっては、魅力的な物件が多く出てくる可能性が高いでしょう。任売以外で、それほど築浅の物件が中古市場に出回ることはほとんどないので、築浅の中古物件が来年以降に増えてくるかもしれません」(飛田氏)
すでに任売の物件は出回っていると言うのは都内の不動産業者だ。
「リモートワークの普及による住み替え需要が多いので、首都圏に限って言うとすぐ売れてしまい、弾数は少なくなっているのが現状ですね。どこも在庫がない状態じゃないでしょうか」
任売だけではない。住宅ローンの返済が不能になり、任売でも買い手がつかなかった物件は競売市場に流れ着く。ここも
コロナ禍で増えているのだ。
不動産競売情報のエステートタイムズによると、競売開始が決定し9月に裁判所に公告された物件の数は東京都で前年比21%増の201件、神奈川県で同14%増の133件、埼玉県や千葉県でも20%以上の増加だ。
競売不動産の事情に詳しいハウスエージェント代表の金田景珍氏は言う。
「法律改正で悪質な占有屋が排除されたり、ネットで物件情報が閲覧できるようになったこともあって、ここ数年で競売市場にも若い人や女性など、業者以外の参加者が増えたのです。そのせいで近年は、落札価格は高騰傾向にありました。
しかし今後、新型コロナの影響で競売に回ってくる物件数が増えれば、
相場が下がってくることも予想されます。ちなみに、まだ参入者が少なかった10年ほど前に弊社が落札した大阪市内の戸建て物件だと、どれも利回りが16~20%を超えています」