東京・湾岸エリアには近年、多数のタワマンが供給され物件数も多く狙い目かもしれない
お得な物件はないものか。競売情報サイトで、都心部の物件を検索してみたところ、築年数は40年と古いものの、原宿駅から徒歩5分の約100㎡のマンションが売却基準価格1000万円で、都営新宿線・菊川駅から徒歩1分の築20年約75㎡のマンションが売却基準価格761万円で競売に出されていた。
金田氏曰く「実際には、市内中心地などのまともな物件は売却基準価格の2倍近くで落札されることが多く、ほとんどの場合、修繕費がかかることになる」ということだが、それでもかなりお得感がある。
住宅評論家の榊淳司氏に、今後お買い得な中古マンションが出そうなエリアを聞いてみた。
「首都圏では
豊洲、有明、東雲など湾岸エリアや武蔵小杉、津田沼あたりの坪単価400万円未満のマンションなどは、一般庶民がかなり背伸びをしてペアローンを組んでいるケースが多い。そうした世帯では、夫婦の収入が5万円ずつでも下がれば、たちどころにローンが払えなくなってしまいます。
とはいえ、売却されるこうした物件が市場に出てくるまでには数か月~半年ぐらいかかるでしょうから、
来春あたりから中古マンション相場の値下がりが始まるとみています」
投資の世界の格言である「逆境こそ最大のチャンス」は、不動産取得にも当てはまるということか。
コロナ禍で注目を集める競売市場だが、素人でも参入できるのか。前出の金田氏は話す。
「競売物件は
入札前の内覧が原則できません。その代わりに、裁判所がまとめた現況調査報告書があるのですが、これが割といい加減な場合もある。例えば明らかな水漏れはなくても、給排水の配管がボロボロの場合も見落とされていて、修繕に数十万円から100万円以上かかる場合もある」
周辺環境も自分が足を運んで調査する必要があるという。
「隣人が問題人物だったり、物件の真ん前が反社の事務所だったという場合でも、調査書には書かれていないことは多々ある。さらに重要なのが、
物件が空室かどうか。元の持ち主がまだ住んでいる場合、立ち退き料を支払いますが、相手が応じなければ強制執行の手続きをしなければならず、手間がかかります」
素人が見落としがちなのが、競売対象となる権利の範囲だ。
「共有持ち分になっていて、落札してもそのうちの
一部の所有権しか入手できないということもある。例えば夫婦でマンションを購入した人が離婚し、慰謝料を払えなくなった元夫の持ち分だけを競売にかけたりするケースがあります。物件明細書をちゃんと読めば、競売にかけられている範囲は書かれてあるはずですが、勘違いして落札してしまう人も多いのです」
1回や2回の応札で落札しようと思わず、相場観を養いながら、掘り出し物件に出会うのを待つのがいいようだ。
<取材・文/奥窪優木 吉井 透>