コロナ対策の優等生だったコスタリカを襲った、強烈な“第二波”が浮き彫りにした「人類の共通課題」

コスタリカの首都近郊にはニカラグア人移民やその子どもなどを中心としたスラムが形成されている

コスタリカの首都近郊にはニカラグア人移民やその子どもなどを中心としたスラムが形成されている。公衆衛生政策が行き届いていないため、これらの地域では感染症の拡大リスクがより大きい

 米国ではついにトランプ大統領が感染し、イギリスなどでも再び感染者が増加傾向を見せるなど、COVID-19の第二波が世界中で止まるところを知らない。コスタリカでも、COVID-19対策で八面六臂の活躍を見せていたダニエル・サラス保健相の父が感染し、9月16日に68歳で亡くなったニュースは、多くのコスタリカ市民に衝撃を与えた。  筆者は5月の段階で、コスタリカがいかに第一派の封じ込めにうまく対応したかを報じた(「コスタリカはなぜたったの1か月でコロナ患者を半減させられたのか?」記事参照)。  しかし第二波の荒波は、そのコスタリカをも苦しめている。そこで、同国における第一波との違いを踏まえ、感染拡大の様相とその要因を探り、そこから学べる教訓を導いてみたい。

第一波とは違う感染経路で、爆発的に拡大した第二波

コスタリカの感染者数

赤の棒グラフが1日あたりの新規陽性確認者数(左目盛)、緑の折れ線グラフが合計感染確認者数(右目盛、単位1000人)

 国内で発生しない限り、新種のウイルスは外国からやってくる。第一波は空からもたらされた。つまり、外国から飛行機に乗って国際空港に降り立った人から広がっていった。  必然的に、国際旅客がもっとも多いフアン・サンタマリア国際空港がある首都圏を中心に、感染が広がった。その拡大を最小限に食い止めた経緯は、既報の通りである。  落ち着いたかにみえたCOVID-19感染状況に異変が生じたのは、6月に入ってからだった。ニカラグアと国境を接する北部の農場などから、新たに感染が広がり始めたのだ。  その当時、国土の中心に位置し、人口の大半を有する首都圏では、感染拡大が一段落したところだった。だが、北部からじわじわと感染者の発見箇所が南下していき、ついに首都圏に到達。そのあたりから、1日あたりの新規感染者確認者数が激増することになる。  第一波(〜5月)の1日あたり新規感染確認者数は最大でも37人だった。ところが、6月19日には初めて3桁となる119人を数えた。  再び2桁に戻ったものの、6月25日から毎日連続で3桁の新規感染が確認されるようになり、7月19日には294人に。8月7日にはついに1000人超の新規感染者が確認される日も出てきて、8月末までには死者も400人を超るに至った。  9月に入ってからは、毎日のように新規感染者数は1000人を超える有様だ。本稿執筆時点(10月6日)時点での死者数は987人で、皆さんがこの記事を読むころには1000人を突破しているだろう。  同時点での感染者(回復者を含む)が8万1129人。総人口が約500万人であることを鑑みると、罹患率約1.62%、致死率が約1.21%。致死率は日本より低いものの、罹患率は西欧最多クラスのスペイン並みだ。  なぜ第一波のように押さえ込むことができなかったのか。
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感染は平等だが、影響はもっとも弱いところから出てくる
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