コロナ対策の優等生だったコスタリカを襲った、強烈な“第二波”が浮き彫りにした「人類の共通課題」

貧困と混乱の中、意図的に無策な隣国ニカラグア

コスタリカ〜ニカラグア国境検問地帯

人気のないコスタリカ〜ニカラグア国境検問地帯。今両国間を移動するなら、逆にここを避けることになる

 コスタリカ北部から国境をひとまたぎしたニカラグアは、つい先日OECD加盟を果たしたコスタリカとは、ベースとなる状況がまるで異なる。パンデミック以前から、そもそも社会的にも経済的にも政治的にも、極めて不安定な状態だった。  ニカラグアは、ただでさえ米州でもっとも貧しい国のひとつである。加えて近年、政府を批判する学生やそれを匿った聖職者などに対し、オルテガ政権は暴力的弾圧を加え、社会情勢の不安定化が著しい。そのため、ここ2年でも数万単位の避難民がコスタリカに逃れてきていた。  さらにオルテガ政権はパンデミックを否定し、大規模集会をむしろ奨励するような発言すらしている。果ては、感染症対策を注意喚起した医師たちを解雇するなど、その無軌道ぶりは世界の知るところだ。  8月8日付の『ワシントンポスト』紙に掲載されたコラムによると、7月29日時点での死者数は、公式には116人となっている。しかし、現地の医者や伝染病専門家などを含むグループ「COVID-19ニカラグア市民監視団」は同日の死者数を2537人としており、大きな開きがある。貧困、政治的混乱と弾圧、パンデミックに対する無策というトリプルパンチが、今ニカラグアを襲っているのだ。  これまで、ニカラグアの人たちが自然災害や武力紛争などによる集団的な危機に陥るたび、コスタリカは国境を開放し、毎回数万から十数万単位で避難民たちを受け入れてきた。  しかし、今回ばかりは勝手が違う。「人類共通の敵」である新型コロナウイルスを持ち込ませないため、コスタリカはニカラグアとの国境を封鎖してしまったのだ。

感染は平等だが、影響はもっとも弱いところから出てくる

 コスタリカ保健省は6月に入って、比較的国境に近い北部地域の農場などに介入し、感染を止めようとした。その地域の人口密度は薄いにもかかわらず、感染はじわじわと、しかし確実に拡大していき、ついには領土の中心部となる首都圏に向かって広がっていった。食い止めに失敗した理由は、感染経路を把握しきれなかったからだ。  郊外の農牧場では、ニカラグアからきた人たちを単純労働で雇っているところも少なくない。彼らの労働条件や住宅事情、衛生環境などは一般的に悪い。つまり、感染が広がりやすく、しかもその経路を捕捉しづらいのだ。  首都圏に達した第二波は、貧困層を辿るように感染が広がっていったと考えられる。そのため、首都圏でもニカラグア出身者が多い、貧困層が集まる地域で感染が広まり、国の総人口500万人に対して毎日数百人から千人単位で新規感染者が確認されるまでになったのである。  ウイルスは人を差別しない。しかし、経済的・社会的地位が低いほど、衛生状態の悪さなどから感染しやすく、感染後の対処も一般的に遅く、悪くなる。コスタリカが第一波と同じように第二波に対処できなかった要因のひとつは、コスタリカ自身が以前から抱えていた経済的・社会的格差にあったといってもいいだろう。人間社会の弱いところから、コロナ第二波は浸透していったのだ。
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長引く規制、高まる不満、公然とあがる批判
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