さて、筆者がリノベーションを手伝うことになったのは、築90年ほどの物件の
最上階(6階)。なんと幸運なことにカミェニツァなのにも関わらず、
エレベーターがついている! 聞くところによると、街で二番目にエレベーターが導入された建物で、何度も修繕が行われているため、重い資材を運ぶ大きな助けになっている。
しかし、このリノベーション、軽い気持ちで働き始めたが、「リフォーム」という生ぬるいものではない。
作業をすればするほど作業が増えていく、蟻地獄のようなものなのだ。
壁のペンキをコテで剥がせば、その下には石膏。石膏を金槌で壊せば、今度は煉瓦。床のパネルを剥がせば、木製の板。木製の板を剥がせば、砂と梁……と、
次々に難敵が現れる。
前述のように最上階にあるため、木材などは釘を抜いてできるだけ再利用するが、それでも
廃棄物は数トンにのぼる。エレベーターに収まるものはまだマシだが、そうでないものは階段で運ばなければならない。新たに使う資材も同じで、朝から住人が仕事から帰る夕方まで、ひたすら工具を振るい続け、資材と廃棄物を運び続けることに……。
カミェニツァ最大の「地雷」である
水回りはさらに悲惨だ。パネル、板の下には階下への水漏れを防ぐためにコンクリートが流し込まれていた。さらにそのコンクリートには鉄製の網が溶け込んでいるため、鑿と金槌、ペンチを駆使して作業を進めていく。
当然、これらは再利用できないため、さらにゴミが増えていく。
汗だくで床のコンクリートを打ち続ける姿は、さながら『ショーシャンクの空に』か『大脱走』である。
ようやく床がなくなったと思えば、今度は
梁が腐食していることが判明。これは丸ごと取り替えるのは不可能なので、新鮮な木材とコンクリートで補強することになった。
「
リフォームを繰り返して、歴史的な建物を長く使い続ける」というと聞こえはいいが、その
手間は生半可なものではない。しかも、業者に頼むこともできるが、多くのポーランド人は経費を節約するため、こういった作業を自らこなしてしまうのだから、頭が下がる。単にケチなのか、働き者なのか……。
しかし、
しっかりとリノベーションができれば、住宅価値が大きく跳ね上がることになる。自分で暮らすにせよ、売却するにせよ、貸し出すにせよ、苦労して投資しただけのリターンは返ってくるのだ。