百貨店跡「3度目の再生」に揺れる地方都市――巨大商業ビル「リムふくやま」は「平成の商業史」の縮図だった
福山市は、旧そごうを同市が進めている中心市街地の都市再生整備計画の中核施設に位置付けるというが、「巨大な商業ビルに小規模な個人商店のみが並び、そこを地域全体の賑わい創出に繋げていく」という光景は、とくに地方都市ではなかなか想像しがたいものである。
福山市が「落ち度が無いにも関わらず降って沸いた天災のような難題」としていた旧そごう再生問題。一方で、今回の再生に際して新たな事業者・再生案を選ぶのは福山市自身である。そのため、仮に早期の「再生失敗」となれば「市に落ち度は無かった」と言い切れないことは確実だ。
「バブル期に生まれた豪華な百貨店」から「公的資金を活用した若者向け・都市型ファッションビル」、そして「公共施設での穴埋め」と「郊外店との競争」「老朽化・省エネ問題」による閉店、行政による「公募とプレゼンテーション」による再生――時代の波に翻弄され、様々な活用がなされてきた大型商業ビルは、「平成の商業史」の小さな縮図であるともいえる。
3度目の再生は、新型コロナ禍のなか厳しい再出発となることは確実である。
間も無く開業30年を迎える巨大商業ビルを「街なかに住む住民にとって便利な施設」にすることができるかどうか――新たな事業者の、そして福山市自身の手腕が試されることになる。
【参考文献】
福山市伏見町まちづくりフォーラム(ウェブサイト)
中条健実(2007):駅前大型店の撤退と再生-地方都市の旧そごうの事例-. 荒井良雄、箸本健二 編『流通空間の再構築』pp.177-196,古今書院.
【協力】
黒崎そごうメモリアル
<取材・文・撮影/若杉優貴(都市商業研究所)>
若手研究者で作る「商業」と「まちづくり」の研究団体『都市商業研究所』。Webサイト「都商研ニュース」では、研究員の独自取材や各社のプレスリリースなどを基に、商業とまちづくりに興味がある人に対して「都市」と「商業」の動きを分かりやすく解説している。Twitterアカウントは「@toshouken」
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この連載の前回記事
2020.08.15
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