「生活が苦しい。助けて欲しいけど周りに知られたくない」……公的支援から取り残される親子をサポートする「こども宅食」の取り組み
「生活に困っている」と言いにくい
今井さんはその原因を以下の4つに分類する。
「心理的な障壁」:自分が困っていると認めたくない、行政への抵抗感
「周囲のまなざし」:支援を求めたことを周りに知られないか不安
「物理的な制約」:窓口の開所時間が生活と合わない
「情報の届け方」:どんな支援があるのかわかりにくい
今何も困っておらず落ち着いた精神状態にある人からすると、助けを求めることへの心理的な障壁や周りの目を気にすることが不可解に思えるかもしれない。だがもし経済的に厳しい状態が続き、生活不安を抱えながらの暮らしが常態化していたらどう感じるだろうか。自分を恥じたり、現状を認めたくない、周りに迷惑をかけそうで言いにくい、などと思ったりしてもおかしくない。支援をしてくれる人はたくさんいるし、制度もある。だが行政からのサポートを受けるには、自分で窓口に出向き「困っています」と伝えなければならない。
これを「申請主義」と呼ぶが、「助けて」が言えない人にとってはプレッシャーになる。苦しさを誰にも打ち明けられず自分だけが抱えてしまった人は、公的な支援の輪から取り残されてしまう。
申請主義に対して、支援が必要な人が窓口に相談に来るのを待つのではなく、サポートをする人が支援を受ける人と関係を作って適切な援助をすることをアウトリーチと言う。こども宅食はこのアウトリーチ型の支援だ。
親の心境に配慮し、申し込みはネットでも可能。こども宅食を利用しているとわからない工夫をして食品が配達されるため、親が感じる「周りに知られるのではないか」との不安を解消してくれる。
各地のこども宅食の実施には、実施するNPOや社会福祉法人等の他に、自治体や企業など、複数の団体が関わる。困りごとを見つけたときの支援活動は、自治体の支援窓口や相談支援をおこなっている民間団体等、専門窓口につなぐ。
生活不安を抱えた30代シングルマザー。看護学校に進学し、「生活が一変した」と喜びの声
ハッシュタグ
