「生活が苦しい。助けて欲しいけど周りに知られたくない」……公的支援から取り残される親子をサポートする「こども宅食」の取り組み

経済的に厳しい家庭の子ども支援に31億円の予算案。国が動く

 利用者との関係性構築では、佐賀県での取り組みが面白い。一斉休校のため週に2~3回、子どもだけで留守番をしている家庭にお菓子を配送する「見守り宅食」を実施した。玄関先で子どもにお菓子を渡しながら簡単な会話を交わし、おうちでの様子を保護者にLINEで知らせる目的がある。 「最初はぎこちない会話でも、数回会うと『わあー!お菓子の人だ』と嬉しそうにしてくれるようになりました。また『退屈だから早く学校に行きたい』や『宿題あるけどやってない』など、自分の状況や気持ちも話してくれるようになりました」(今井さん)  こども宅食に似た支援として、地域住民や自治体が食事を無償あるいは安価で提供するこども食堂もある。後者は食事を摂る場としてだけでなく、居場所としての機能も果たし、子どもが家庭や地域から孤立してしまうことを防ぐ役割も担う。  経済的に苦しい家庭で育つ子どもを支援する動きは国を動かし、2020年度の第二次補正予算に組み込まれることが決まった。事業名は「支援対象児童等見守り強化事業」で、予算案は31億円だ。 「同プランの取組を一層推進するため、子ども食堂や子どもに対する宅食等の支援を行う民間団体等が、要保護児童対策地域協議会の支援対象児童等として登録されている子ども等の居宅を訪問するなどし、状況の把握や食事の提供、学習・生活指導支援等を通じた子どもの見守り体制を強化するための経費を支援する」(厚生労働省資料より引用)  今井さんは、「今はやっと予算に入ったというだけで、まだまだやることがたくさんあります。こども宅食事業のビジョンに共感し、チャレンジしてくれる自治体の方と繋がりたい。勉強会の開催や伴走支援などを提供し、全国での実施事例を増やしていきたいです」と意気込みを話した。 <取材・文/薗部雄一>
1歳の男の子を持つパパライター。妻の産後うつをきっかけに働き方を見直し、子育てや働き方をテーマにした記事を多数書いている。
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