拡大する米国のBLM運動。IT業界への知られざる影響とは?

言葉の置き換え

 こうした言葉の置き換えは、BLM運動で一気に火を噴いたわけではない。実はこの数年、IT業界で徐々に進行していた。各種のプログラミング言語や、ソフトウェアで用語の置き換えが進んでいる(参照:ZDNet Japan、)。また、ハードウェアの「マスター、スレーブ」の用語についても、問題として既に顕在化している(参照:BBC NEWS)。  マスター、ブラックなどの用語の動きについては、mattn 氏(普段からGo言語について活発に情報発信をしている)の「blacklist/whitelist master/slave に関する情報集め」という文書がよくまとまっている。  「マスター、スレーブ」の代替としては、以下のような用語が挙がっている。 leader/follower builder/worker leader/replica primary/replica primary/second (DNS)  「ブラックリスト、ホワイトリスト」の代替としては、以下のような用語が挙がっている。 blocklist/allowlist blocklist/safelist blocklist/passlist denylist/allowlist stoplist/golist redlist/greenlist  個人的には、ブラックの置き換えでブロックを使うのは、語感に差異が少なく、センスがあってよいと感じている。

アメリカ中心のIT業界の弊害

 さて、こうした動きは、アメリカがIT業界の中心ゆえに起きている現象だと言える。衛星的な立場の本邦は、その動きに振り回される側である。こうした時、世界は繋がっており、IT業界の現在の中心は、やはりアメリカなのだと思わされる。  さて、現実問題として、世の中の言葉の置き換えはどれぐらい進むのだろうか。マスター、スレーブ、ブラックの3つの言葉に焦点を当てて、Wikipedia のタイトルとして、どれぐらいの単語が登録されているのか簡単に調べてみた。  以下、「ページタイトルに含まれるもの」という条件で検索を行った結果だ。 日本語版 Wikipedia  「マスター」568件  「スレーブ」11件  「ブラック」1,016件 英語版 Wikipedia  「master」6,074件  「slave」750件  「black」13,050件  これらの用語が、どこまで置き換えられていくのか興味があるところである。
次のページ 
言葉の急激な変化の危うさと、慎重な議論の必要性
1
2
3
バナー 日本を壊した安倍政権
新着記事

ハーバービジネスオンライン編集部からのお知らせ

政治・経済

コロナ禍でむしろ沁みる「全員悪人」の祭典。映画『ジェントルメン』の魅力

カルチャー・スポーツ

頻発する「検索汚染」とキーワードによる検索の限界

社会

ロンドン再封鎖16週目。最終回・英国社会は「新たな段階」に。<入江敦彦の『足止め喰らい日記』嫌々乍らReturns>

国際

仮想通貨は“仮想”な存在なのか? 拡大する現実世界への影響

政治・経済

漫画『進撃の巨人』で政治のエッセンスを。 良質なエンターテイメントは「政治離れ」の処方箋

カルチャー・スポーツ

上司の「応援」なんて部下には響かない!? 今すぐ職場に導入するべきモチベーションアップの方法

社会

64bitへのWindowsの流れ。そして、32bit版Windowsの終焉

社会

再び訪れる「就職氷河期」。縁故優遇政権を終わらせるのは今

政治・経済

微表情研究の世界的権威に聞いた、AI表情分析技術の展望

社会

PDFの生みの親、チャールズ・ゲシキ氏死去。その技術と歴史を振り返る

社会

新年度で登場した「どうしてもソリが合わない同僚」と付き合う方法

社会

マンガでわかる「ウイルスの変異」ってなに?

社会

アンソニー・ホプキンスのオスカー受賞は「番狂わせ」なんかじゃない! 映画『ファーザー』のここが凄い

カルチャー・スポーツ

ネットで話題の「陰謀論チャート」を徹底解説&日本語訳してみた

社会

ロンドン再封鎖15週目。肥満やペットに現れ出したニューノーマル社会の歪み<入江敦彦の『足止め喰らい日記』嫌々乍らReturns>

社会

「ケーキの出前」に「高級ブランドのサブスク」も――コロナ禍のなか「進化」する百貨店

政治・経済

「高度外国人材」という言葉に潜む欺瞞と、日本が搾取し依存する圧倒的多数の外国人労働者の実像とは?

社会