拡大する米国のBLM運動。IT業界への知られざる影響とは?

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StockSnap/Pixabay

IT用語がBLM運動の影響により置き換えに

 黒人男性ジョージ・フロイド氏が白人警官によって殺された事件は、様々な場所に影響を与えている。事件後、大きく拡大した「BLACK LIVES MATTER」(黒人の命は大切だ)運動は、IT業界にも波及している。それも、特定のプロダクトにではなく、IT業界全体で大きな作業が発生しそうになっている。  それは、IT用語の置き換えである。黒人の差別問題に関係のありそうなIT用語を、関係のなさそうな用語に置き換えようという動きである。具体的には、「マスター」「スレイブ」のような用語や、「ブラック」が含まれる用語である。これらは「今後、それらを使わないようにしましょうね」ということでは終わらない。  一つの動きは、既にあるプログラムを書き換えようというものだ。上記のような変数名や、関数名を使っているものを、全部書き換えましょうという動きだ。そうなれば、大きな作業工数が必要になる。アメリカの企業ならば、それで「私たちは高い人権意識を持っています」と示す、広報的な利点があるかもしれない。しかし、アメリカ以外の企業は、その変更に巻き込まれることによって利益のない作業時間を割かれる可能性がある。  もう一つの動きは、多くの人が利用している大規模サービスの各種機能名を変更するというものだ。そうなれば、過去のIT技術書や、説明ドキュメントが意味不明になってしまう。たとえば、社員研修用や、新人研修用に用意している文書は、この変更に合わせて、全て更新しなければならない。また、出版物は、全て訂正文を用意するか、次の版から書き直しをしなければならなくなる。  単に表記上の文字を変えようということだけでなく、実経済に影響のある動きになっている。

GitHubの動き

 大きな動きとしては、世界規模で利用されているソフトウェア開発プラットフォーム兼、ソースコードホスティングサービスの GitHub の動きだ。同サービスは、世界で5000万人の開発者が利用している。  6月13日に、Google の開発者 Una Kravets が、「master を main にすると嬉しい」とツイートした。それに対して、GitHub の CEO の Nat Friedman「いいアイデアだね、もう取り組んでいるよ!」と返信した(参照:BBC News)。 http://twitter.com/Una/status/1271180494944829441  ちなみに、マスターという言葉はIT業界では、コピーを作る前のオリジナルのものを指す意味として、よく用いられている。現実の世界では「マスターキー」の「マスター」が分かりやすいと思う。また、「マスター音源」として使われる「マスター」も同じ意味だ。  では、GitHub (Gitというツールを利用して、バージョン管理をおこなう)の「マスター」は、「主人と奴隷」という意味の「master / slave」と関係ないかと言うと、実は関係があるという話がある(参照:Latest topics > outsider reflex)。  Git というツールは、BitKeeper というバージョン管理システムの代替として開発された(参照:Hacker News)。その BitKeeper で、「master / slave」という用語が使用されており、それがそのまま流用されたのではないかという話がある(参照:bitkeeper)。  Git の開発に参加した Petr Baudis は、マスター録音のマスターの意味で、master を使ったが、その後何度も別の名前にした方がよいと思ったとツイートしている。その発言に対して、他の開発者が、命名は難しいので自分を責めないでください、変更は必要でしょうがと返信している。  こうした流れがあるために、GitHub で「マスター」という言葉が変更対象になるのは、ある意味、いつかは通らないといけない道だったとも言える。ちなみに、Git では、コピー前のプログラムを「マスター」、コピー後のプログラムを「ブランチ(枝)」と呼ぶ。とすれば、素直に考えれば、コピー前のプログラムは「トランク(幹)」でないとおかしい。そうした言葉のねじれは発生していたわけだ。
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以前から存在していた言葉の置き換え
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