産業構造の変化で大人になれない「キモい」男たちが生まれた<史的ルッキズム研究3>
1970年代に「キモい」の起源がある!?
現代のルッキズムを考えるこのコラム、第1回は産業ロボットの導入期に見られたキモい話を、第2回は全国キャンディーズ連盟のキモい話を紹介しました。現在の私たちが感じている“キモい”という感覚は、その歴史的起源を1970年代にもっているだろう、という仮説をたてました。
「キモい」という言葉が指し示す範囲は、非常に広く、深いものです。それは特定の外見的特徴を指す言葉ではありません。それは外見であるよりも、その人の言葉遣いや行動の様態にかかわっていて、社会学の用語でいう“ハビトゥス”の領域を指しています。“ハビトゥス”とは、その人の身についた振る舞い、その人の身振りからうかがえる社会的位置、身振りが含んでいる思考様式です。「キモい」という表現は、たんに人間の外見をあげつらうのではなく、外見をとおして人間の中身をえぐっていきます。90年代にこの言葉が使われ始めたころ、「キモい」はもっと軽い意味だったのかもしれません。しかしこの表現が流行し、人口に膾炙するうちに、「キモい」は人間を深くえぐる言葉になっていきました。
いつまでも大人になれない大人たち
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2020.05.14
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