「アリ地獄」のようなブラックな引越会社と闘った男の軌跡。『アリ地獄天国』土屋トカチ監督<映画を通して「社会」を切り取る15>

会社を庇う心理とは

――西村さんの妻も映画に登場しますが、西村さんの激務を証言されていますね。 土屋:西村さんの妻は西村さんが頑張っているので、激務を止められなかったと言っていました。西村さんは結婚を機にSEを辞めて、引っ越し会社へ転職したんですね。今振り返れば転職する前の会社の方がはるかに条件は良かったのですが、SEは長時間労働で不満もあったんです。残業代も出るには出ていましたが、結婚を機にもっと稼ごうと思ったそうです。  西村さんの妻は外資系企業で働いていたので、すぐにこの会社がおかしいとわかったんですね。まず、業務中に起こした事故の弁償金が給与から天引きになるのはおかしいと指摘しました。しかし、西村さんは「みんなそうしている、うちの会社のルールはこれなんだ」と言って会社を庇いました。そこで、お灸を据えるために数日間家出したこともあり、西村さんもこの会社はおかしいと少しずつ気付き始めたようです。 ――映画に登場する「プレカリアートユニオン」のような非正規の労働者でも加入できる組合があることはあまり知られていないと感じます。 土屋:非正規の労働者でも加入できる組合はもちろんありますし、労働相談も受け付けています。実際に入るとなるとためらう方も多いのですが、相談する窓口があるということは知って欲しいです。  弁護士を雇うと費用が高くなる案件でも、組合だと早く決着がつくこともありますので、もっと多くの人たちが加入するべきだと思っています。 ――土屋監督自身が労働争議を起こした経験もあると聞きました。 土屋:そうなんです。偉そうに「加入した方がいい」なんて言いましたが、僕も自分自身が20年前に映像制作会社をクビになりそうになった時に初めて労働組合に加入しました。その経験がなければ労働組合を知らなかったので、もっとその存在を知らせたいという気持ちでこの映画を作りました。 ※後半は土屋監督に労働争議を闘う中での西村さんの変化や自らが経験した労働争議、これから取り組みたいテーマなどについてお話を聞きます。 <取材・文/熊野雅恵>
くまのまさえ ライター、クリエイターズサポート行政書士法務事務所・代表行政書士。早稲田大学法学部卒業。行政書士としてクリエイターや起業家のサポートをする傍ら、自主映画の宣伝や書籍の企画にも関わる。
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