韓国国内における統一教会系組織の”謝罪”活動には前例がある。2012年、日本統一教会の江利川安栄元会長が代表を務め、合同結婚式で韓国人とマッチングされ韓国に在住する日本人女性信者たちで構成された「日韓の歴史を克服し友好を推進する会」が、着物姿などで謝罪行動を行った。(江利川元会長は2015年、教団の分派であるサンクチュアリ教会へ移籍)
この時も韓国の主要紙である東亜日報や中央日報が報じた。
しかし、元徴用工については1965年締結の「日韓財産及び請求権に関する問題の解決並びに経済協力に関する日本国と大韓民国との間の協定(日韓請求権協定)」において「完全かつ最終的に解決されたことを確認する」と明記されており、また慰安婦についても2015年の日韓両政府による日韓合意(日韓外相会談における慰安婦問題の最終的かつ不可逆的な解決の確認)から、安倍政権は「徴用工及び慰安婦の問題は解決済み」との立場を繰り返し表明している。
また、当連載で報じてきたように、統一教会は日本国内では自民党安倍政権に接近、安倍晋三首相直々の依頼による特定候補者への組織票の提供の他、運動員・秘書・スタッフ派遣、後援会結成に加え2世信者を使った一連の工作など様々な形で現政権を支援しており、いわば共存関係にある。
中でも2世信者組織・勝共UNITEは街宣やデモで「安倍政権支持」」「安倍政権を支えよう」とのスローガンを掲げて活動、安倍政権への追従を明示してきた。〈参照:「
自民党安倍政権と統一教会。2016参院選、教団2世信者を使った策動」、「
安倍政権と統一教会。首相官邸での密談発覚、利用される2世信者たち」|ともにHBOL本連載〉
「安倍政権を支えよう!」横断幕を掲げるUNITE(2016.6撮影:鈴木エイト)
ところがその一方で、同じく従順な2世信者を韓国へ”派遣”し安倍政権への謝罪要求を行わせているのだ。日本での協力・共存関係と、今回韓国で2世に行わせた日本政府・安倍政権批判との齟齬。この矛盾をどう捉えればよいのか。教団が2世を教化し、それぞれの2世組織で安倍政権支持運動と安倍政権批判をさせていることはダブルスタンダード以外の何物でもない。
この2重構造には前例がある。教団内においては安倍首相を打ち負かし屈服させ教育する対象と位置づけられていることを連載の中で明らかにした。〈参照:
安倍政権と蜜月の関係を築く一方で、統一教会・韓鶴子総裁が日本の幹部に下していた仰天指令|HBOL〉
安倍政権との蜜月関係を維持する一方で、教団内では安倍首相を韓鶴子総裁に侍る存在であると日本の幹部は指導されている。そこにあるのは極端な贖罪意識の植え付けだ。
流出した教団内部資料によって毎年300億円以上のお金が日本人信者から韓国の教祖一族へ上納されていたことが判明している。日本人から収奪したお金が教団中枢や関連企業群を支えているのだ。なぜ日本人信者はエンドレスで苛烈な献金ノルマに追われながら唯々諾々とお金を納めるのか。なぜ合同結婚式で韓国人男性とマッチングされた日本人女性信者は韓国の寒村へ喜んで嫁いでいくのか。それは日本人信者が韓国への贖罪意識を植え付けられているからに他ならない。その究極の狙いは、韓鶴子総裁及び韓国人幹部へ隷従させることにある。
日本が韓国に対して行ったことへの罪滅ぼしのため、率先して韓国へ奉仕しにいく日本の信者たち。母の国・日本が父の国・韓国へ仕える構図がある。この「歴史観」は教団の内部統制の手段として使われており、今回はそれが表に出たため可視化されたに過ぎない。