スピリチュアル・シンポに続きオウムに殺された坂本弁護士を中傷する講演会まで。どうした立教大学

立教大学で講演する大田俊寛氏

立教大学で講演する大田俊寛氏

スピリチュアル・シンポ翌日に行われた「講演」

 12月9日、立教大学「人文研究センター」主催の大田俊寛氏(埼玉大学非常勤講師)公開講演会〈「人文学と知」われわれは宗教や「カルト」の問題にどのように向き合うべきか——オウム真理教の事例を中心として〉が同大学内で開催された。  その内容はなんと、オウム真理教、カルト、カルト批判の歴史を誤認し、オウム真理教に妻や息子ともども殺された坂本堤弁護士などカルト問題に取り組んできた人々を中傷する内容ものだった。  70人以上が来場し配布資料が不足するほどの大盛況だったが、講演後に講演者である大田氏が来場者数人に取り囲まれ「ダメ出し」される一幕も。  同講演会は、本サイト配信の「胎内記憶」医師の登壇中止でも立教大スピリチュアル・シンポが不思議でいっぱいだった件でリポートした、シンポジウムの翌日のことだった。主催者もテーマも別だが、いずれの主催者も立教大学の研究組織。2日連続で立教大学において「アカデミズム崩壊の危機」を感じさせられた。

ひかりの輪の観察処分外しに協力する宗教学者

立教大学で講演する大田俊寛氏2

立教大学で講演する大田俊寛氏

 大田氏は、もともとグノーシス主義などの宗教思想史を研究する研究者だが、2011年に『オウム真理教の精神史』を出版。2012年に雑誌『atプラス』(13号)の企画としてひかりの輪・上祐史浩代表と対談し、2014・17年の2度にわたって「ひかりの輪外部監査委員会」に対して、ひかりの輪は真摯に反省しているなどとして、団体規制法に基づく観察処分の対象外とすることを支持する意見書を提出している。 ”念のために繰り返せば、「ひかりの輪」においては、かつてのオウム真理教のあり方に対する反省が、きわめて真摯かつ徹底した仕方で行われている。”「ひかりの輪」の宗教的活動に関する私見(2017年の追記))  ひかりの輪は2007年に「アレフ」から離脱した、オウム真理教の一派。代表の上祐史浩氏は「脱麻原」「事件への反省」「被害者への賠償」などを掲げ、アレフとは逆に社会融和路線をアピールしている。  上祐氏は麻原から授かったホーリーネーム「マイトレーヤ」を名乗ることもなくなった。しかし、実際には教団施設に弥勒菩薩(マイトレーヤ)のポスターや絵画を掲げ、暗にオウム時代からのステイタスを信者にアピールし続けている。地下鉄サリン事件が起こった3月20日(東京・霞ヶ関駅では慰霊式典が開催される)に信者たちを引き連れて温泉旅行に行く「聖地めぐり」企画を開催したことも複数回あった。
2016年3月20日の「聖地めぐり」

2016年3月20日の「聖地めぐり」。永平寺(福井県)の参道で信者たちと饅頭を歩き食いる上祐史浩氏

 また、ひかりの輪がオウム真理教犯罪被害者支援機構に支払っている賠償金額は、2014年以降は毎月25万円でほぼ一律(ひかりの輪:被害者賠償金のお支払いについて)。前述の「聖地めぐり」は、たとえば2泊3日で20人程度が料金(宿泊費、交通費、温泉代は別)を支払うだけで少なくとも数十万円の収入になるが、聖地めぐりを開催した月でも賠償額は変わらない。  2018年7月に教祖・麻原彰晃(松本智津夫)と6人の弟子たちへの死刑が執行された(後日さらに6人に執行)。その際『週刊新潮』(同月11日発売号)が、オウム真理教内で1991年に女性信者が殺害されたものの発覚しておらず事件として扱われてこなかったが、その殺害にひかりの輪の上祐史浩代表が立ち会っていたことを報じた。記事によると、同誌は死刑執行前からその事実を掴み上祐氏に取材をしていたものの、上祐氏は回答を拒否。死刑執行後になって事実を認めたという。  上祐氏は一連のオウム事件を総括し反省したかのように装いつつ、実は自身が直接目にした殺人事件の存在を意図的に隠し続けてきたことになる。  これが上祐氏の「脱麻原」「事件への反省」「被害者への賠償」の実情だ。  ひかりの輪は現在、団体規制法に基づく観察処分の期間更新を不当として国を訴えており、今年2月には東京高裁が国側の逆転勝訴とする判決を言い渡した。大田氏が意見書を寄せた「ひかりの輪外部監査委員会」は、脱会者の証言によればひかりの輪が観察処分外しを目的として始めたものだ。2017年に、「聖地めぐり」で無免許のまま運転手を務めていた関係者が警察に摘発されたが、その関係者も外部監査委員だった。「外部監査」とは名ばかりで、事実上の信者やシンパを使った自作自演ということだ。  こうした上祐氏やひかりの輪を、大田氏は「真摯に反省している」ものと評してきた。その意見を撤回するような意思表明は、今回の講演でも特に行なわれなかった。
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カルト批判を理解しないまま発せられる「カルト批判」批判
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