会場となった立教大学
スピリチュアル用語だけでなく不謹慎なジョークも飛ぶ
12月8日、立教大学内で「
立教大学ウェルネス研究所」主催の公開シンポジウムが開催された。タイトルは「
霊性(スピリチュアリティ)と現代社会」。事前に、科学的根拠がないと批判を浴びている「
胎内記憶」(子供が胎児やそれ以前の状態だった頃の記憶を持っているとする主張)の提唱者・
池川明医師の講演が予定されていたことで批判を浴び、池川氏の講演を取りやめてシンポジウムそのものは開催された。
ところが、池川氏抜きで行なわれたシンポジウムも、
「胎内記憶」「在日宇宙人」「2025年に人類滅亡」「神の声を聴く詩人」「木や花と話せる」といった単語や主張が飛び交うトンデモ講演会だった。
講演者が「統合失調症」を冗談のネタにして来場者たちともども笑い声を上げる場面もあった。
池川氏が批判された主な理由は、
虐待される子供は虐待されるために生まれてきたのだとする主張を常々行っており、これが虐待の正当化や容認にあたるのではないか、とされていた点だ。にもかかわらずシンポジウムは、
池川氏講演の中止に言及した主催者が「(虐待とは)逆たい!」とダジャレで笑いを誘ってコメントを締めくくる、不謹慎極まりないものとなった。
立教大学池袋キャンパス内で午後2時から行なわれたシンポジウムは、満席とはいかないまでも見たところ来場者200~300人はいそうな盛況。入り口には、池川氏の名前を掲載したままのポスターが貼られていた。
池川氏の「胎内記憶の講義」で学生のスピリチュアリティが上がる?
「UFO」は「当たり前に見られるスピリチュアルな現象」!?
冒頭、主催者である立教大学ウェルネス研究所の研究員・
濁川孝志(同大コミュニティ福祉学部教授)が池川氏講演の中止について謝罪。「いきさつについては控えたい」とした。3月で定年退職となる濁川氏は、この日の講演がこれまでの活動の集大成だと語った。また来場者による会場での録音、撮影などの記録については「好きなようにやって下さい」とした。
濁川孝志・立教大コミュニティ福祉学部教授
まずは「場を清める」(濁川氏)と称して和太鼓の演奏。続いて濁川氏の講演が始まった。うつ、自殺、引きこもり、異常気象、生物多様性の減少、環境問題の深刻化などは「
スピリチュアリティの低下が関連」していると濁川氏が語る。自分の内なるスピリチュアリティに目覚めれば、人は謙虚になり、日々の出来事に対して感謝の気持を持って対照できるようになり、自分自身を最も幸せにするのだという。
濁川氏が「当たり前に見られるスピリチュアルな現象」として、以下のものを挙げた。
濁川氏が「当たり前に見られるスピリチュアルな現象」として挙げたもの(濁川氏の発表資料より)
”
●UFO:多くの人が見ている
●霊力を備えた人達:未来の予想、多くの預言者
●夢の教え:エドガー・ケーシー
●時空を超えた影響:遠隔気功⇒科学的な実験
●生まれ変わり:多くの文献、退行催眠
●無からの物質化:サイババほか
●亡くなった魂とのコンタクト:多くの事例”(濁川氏の発表資料より)
オカルトや精神世界に触れたことがない人にとっては聞いたこともないような単語も混じっているのではないだろうか。
一般的には「当たり前に見られる」現象のようには思えない。
しかし
これらを無下に否定する態度は非科学的であり、近年では「量子論」の分野でこうした現象について言及されるようになっているのだというのが、濁川の主張だ。
これに続く濁川氏の話は、これらの現象についての科学的説明でもなければ「量子論」についての説明でもない。スピリチュアリティを重視する人々の間で人気が高い映画『地球交響曲(ガイアシンフォニー)』の龍村仁監督の「かつて人が、花や樹や鳥たちと本当に話ができた時代がありました」などとする言葉を紹介しただけだ。
無碍に否定するのが非科学的だという主張はいいとして、自分が信じるものについて根拠も示さず主張するだけというのは科学的姿勢なのだろうか。
濁川氏は、批判を浴び今回のシンポジウムでの登壇を取りやめた池川氏のことも持ち上げて見せた。立教大学に
池川氏を招き学生たちに向けて「胎内記憶」について講義をしてもらったら、学生たちのスピリチュアリティが上がったというのだ。
濁川氏の発表資料より
濁川氏自身が開発に関わった「
日本人青年におけるスピリチュアリティ評定尺度」によって測定した結果で、様々な質問に答えさせることでスピリチュアリティを測定するのだという。池川氏の講義の前と後で学生に同じ測定を行ったところ、講義後のスコアが上がったというのである。
科学的根拠のないスピリチュアルな講義を聞かせて学生を感化させてしまっただけとしか思えないが。大学の教員が学生にこんな「人体実験」をしていいものだろうか。