続くトークセッションは結局、池川氏に関する内容になった。シンポジウムの冒頭では「いきさつについては控えたい」と語っていたはずの濁川氏が、登壇者たちに話を振る。
「やっぱり避けて通れないのは、池川明先生がね、本来ならここでしっかり語っていただく予定だったんですけど。それについて先生方から一言コメントをいただきたいんですね。ざっくばらんに言うと、池川先生のご著書とかこれまでの講演を、児童虐待を容認するように捉えられたんですね。ぼくは誤解だと思っていますけども。でもまあ、そういう風に捉えられた方が、『そういう人に大学の場で発言させるのはいかがなものか』というクレームが大学に来て、大学当局はそれを認めたわけではありません。最終的にぼくが説明をして(大学等当局は)わかってくれました。ただ、そういうことを新聞が書いたりすると、その影響は簡単に払拭できない部分があって、今回はご登壇(を中止?)していただいた」(濁川氏)
「そういう世界は嫌だとか気持ち悪いとかって人が、実はいた方がいい。みんなが『そうだ、そうだ』と言った方が却って気持ち悪い。それは社会的なバランスで、そういう意見をお持ちの方がいてぜんぜんオッケーだと思います。ただ、今回、そういう場を立教大学が作って頂いて、こういう考えもあるんだけどどうだろうかという場にできたと思うんですよね。そこのところが、順序が違っていたんではないかと。予見とか予測とか思い込みが先走っていて、ああいうことをもし言われるんだったら、この場に来ていただいて、けしからんということであれば話し合いができる。その話し合いの場をなくしてしまったということが口惜しいし残念」(萩原氏)
「池川先生のお人柄はよく存じ上げていますが、お金とかそういうもので動いている人じゃない。今回問題になったところも、本意は、池川先生は苦しむ人に救いとなる言葉を差し上げたいというところなんですね。(池川氏は)『ほんとに人のためにあえて危ないところに突っ込んでいく。それでもしバッシングを受けても、それは胎内記憶を広げるきっかけになるはずだ』と割り切っているところがあると思います。ただ、やはりこういったことを言われることは確かなんですが、それは当然です。ではどうしたらいいのか。こういったことは皆の集合意識、フロイトが言うところの集合的無意識ですね。それが全てを決めていきます。(略)ある程度認識が深まるとポーンと出てくるんですね。みんなの集合意識が認めてないことは出てこないと言われています。ですから胎内記憶であるとか、こういう霊性、それを受け入れる人が増えてくる。そうすると、そういったこと(批判)を言う人も、だんだん減っていくだろうと。(略)池川先生も納得してると思います。ですから、これから、皆さんの意識が大事になってくる。ひとりひとりの意識が大事になってくる」(長堀氏)
「ぼくも永堀先生とほぼ同じ意見です。人間というのはマイナス的な発言、行動にジャッジしやすくなります。だから、楽しくないとか悲しいとか苦しいとかいう出来事に対して、人間は囚われてしまう傾向性があります。そこから早くプラスの方向、明るく楽しくいい考え方、善の考え方にしていくことが私たちの改善策ではないかなあと思います。それをすることによって人々はだんだん幸せになっていく。そういう流れになっていますので、マイナスにどうしてもジャッジして腹が立つとか悲しいとかそれ変とか言う人は、そのまま置いておきましょう。私たちは楽しく明るくしあわせな方法を考えていく。これが一番大事だと思っています(会場拍手)」(康弥氏?)
「池川先生はなんて言ってたか。バッシングをしている人たちに向けて『彼らは虐待を本当になくしていこうとしている、すごい心の優しい人なんだよ。だから攻撃的になるんだよ。だから本当は素晴らしい人なんだよ』って言うんですよ。すごいですよね、これって。自分をバッシングする人を。これが池川先生の本質なんです。彼は確かに『子供は親を選んで生まれてくる』と言う。これは子供の証言だからウソもホントもなくて、実際そういう子がいるんですね。その中には『虐待をする親でも選んで生まれてきた』という。これは証言だから。池川さんが言ってるわけじゃなくて。それを意味づけしてるんです、池川先生は」(濁川氏)
先ほどまでの「信じるか信じないかはあなた次第!」のような態度はどこかに吹き飛んで、完全に「真実」であるかのように力説する濁川氏。
さて、その頃、当の池川氏はどうしていたか。シンポジウムの真っ最中に、池川氏の有料メルマガの「増刊号」が配信されていた。タイトルは〈
立教大シンポ、「胎内記憶」研究医師が登壇取りやめ〉。すでにやや日刊カルト新聞の若田部修記者が同紙上でリポート*している。
〈*やや日刊カルト新聞:
胎内記憶擁護の研究者が立教大学で講演〉
”チラシには私の名前が出ていますが、私は不参加。
なぜかというと、ネットにフェイクニュースが流れ、そのフェイクが拡散されたため
某大新聞が大学トップに「こんな輩を出していいのか?」
「出すなら記事にするぞ」と脅しをかけたらしい(伝聞推定です)ので
ビビった当局が私の出演差し止めを行った、というのが私の理解です”(池川氏のメルマガより)
講演中止に至る経緯の説明が、先ほどの濁川氏の説明と全く違う。
このメルマガの内容を知ってか知らずか、濁川氏は池川氏に関する話題を、こう締めくくった。
「3日前から一生懸命考えてきたギャグが一つあるんです。ギャグですよ。いいですか。笑って下さいよ。何故か九州弁になって、『それは逆たい!』(会場、若干の笑いと拍手)。はい。
池川先生は虐待をする人じゃなくて、『それは逆たい!』。はい。ありがとうございます。大してウケなかったですね」(濁川氏)
登壇した人々の中の誰一人として、池川氏が指摘されている問題を問題だと考えてはいないようだ。そして池川氏抜きでも、「こんなシンポジウムが大学で、大学内組織の主催で行なわれていいのだろうか?」と首を傾げたくなるには十分なシンポジウムだった。
登壇者たちの池川氏問題に関する全発言はやや日刊カルト新聞のYou Tubeチャンネルに、
立教大学ウェルネス研究所公開シンポジウムとしてアップされているのでそちらで確認可能だ。
終了後の物販コーナーも大盛況
<取材・文/藤倉善郎 取材協力:若田部修>