マクリ大統領の苦悩は続く (photo by Erica Canepa/Bloomberg via Getty Images)
10月27日に予定されているアルゼンチン大統領選挙の前の予備選挙が今月11日に行われた。結果はアルベルト・フェルナンデスとクリスチーナ・フェルナンデスの大統領と副大統領候補のコンビ(47%)が現職のマウリシオ・マクリ大統領ととミゲアンヘル・ピチェト副大統領候補のコンビ(32%)に得票率において15%の差をつけて勝利した。今回の予備選挙には10組のコンビが挑んだが、上述の2組のコンビのどちらかが最終的に勝利のカギを握っているということでこの2組に注目が集まっていた。(参照:「
Pagina12」)
このような予備選挙の導入は10年前から実施されているが、15%の大差が意味するものはマクリが再選される可能性はほぼゼロということになる。しかも、前者のコンビが47%を獲得したということは、実際の大統領選挙の際に無効投票などが対象外にされることから実質的に前者のコンビが過半数の支持率を獲得する可能性が高く、決戦投票に臨む必要がなくなるということになる。
それにしても今回のマクリ大統領コンビの大敗は誰も予測しなかった。寧ろ、一部の予測は当初優位にあるとされていたフェルナンデスにマクリが追いつき追い越したという評価もあったほどだ。エスタブリシュメントがマクリの勝利の演出をしていたということになる。
マクリの敗北は彼を支えていた
中流層が彼を見放したことである。
マクリが政権に就いた2015年から現在に至るまで国民を喜ばすものは何一つなく、高いインフレ、失業者の急増、貧困層の増加というこの3つの要因によって彼は国民から信頼を失って行った。
例えば、今年上半期のインフレは22%となっているが、これまで1年間のインフレは56%を記録している。この30年間でこれほど高いインフレを経験したことはない。インフレの上昇率が余りに高いために給与の昇給がそれに追いつかず消費者の購買力は益々低下している。貧困層は32%にまで及んでいる。マクリが大統領に就任してから産業分野だけでも昨年8月の時点で78000人が職を失っている。今年の第一四半期での失業率は10%となり、最近13年間で最高の失業率だという。(参照:「
Infobae」)
その影響で通貨ペソはドルの前に下落を続ける一方だ。もともと、アルゼンチンの国民は自国の通貨への信頼はゼロで常にドルを手に入れたがる。ペソが下落すればするほどドルを買い求めるようになり、ペソの下落をより加速化させる現象が起きている。