今回の予備選挙はあくまで予備でしかない。しかし、本番まであと11週間しか残っていない。15%の差を縮めるには毎週1.4%の差を埋めねばならないのである。これは現状から見てその可能性はないということである。
特に、一番の票田であるブエノスアイレス州でマクリの票が伸びなったのは致命傷である。またマクリの後継者と見られているマリア・エウヘニア・ビダル州知事がアクセル・キシロフ候補の前に18%(50%対32%)の大差で敗れたのも予想を全く裏切る結果であった。ビダルの州知事としての治世は高く評価されていたからである。アクセル・キシロフはクリスチーナフェルナンデス前大統領ン政権下で経済・財務相を務めていた。ブエノスアイレス州の勝利者の政党が大統領になっているという前例からもアルベルト・フェルナンデスとクリスチーナ・フェルナンデスの勝利はほぼ確実ということである。
マクリを強く推していたブラジルのボルソナロ大統領はブラジルからの輸出にアルゼンチンが制限を加えられる場合を懸念している。フェルナンデス、ルセフ、チャベスという左派同盟の様なものを形成していたことから、マクリが政権から去れば、ブラジルにとって中国に次ぐ第二の取引国であるアルゼンチンとの関係の依存から脱皮してもって国際的に幅を広げた貿易取引を実行して行く意向を表明している。
また、最近合意に至った欧州連合とメルコスルの合意についてもそれに反対しているアルベルト・フェルナンデスとクリスチーナ・フェルナンデスのコンビがそれを破棄する可能性もあると見て、その場合はブラジルは単独で欧州連合との合意を維持して行く姿勢である。
<文/白石和幸>