母親と記念撮影するクルド人少女(右)。表情は悲しみに満ちている
3月22日、埼玉県川口市立のある小学校で卒業式が行われた。足取りは重く、それでも一歩、一歩、学校へ向かう少女の心境はいったい、いかほどであったであろうか。
少女はトルコ国籍クルド人である。両親とともに2歳で来日した彼女に、トルコの記憶は何もない。難民申請中である家族は入管の厳しい管理下に置かれ、あらゆる自由を制限されながら生活している。日本人の子供たちと見た目が違うため、学校では辛いことも多々あった。
それでも少女はしっかり勉強し、この国で生き、弁護士の夢を叶えようと日々努力していた。この家族と筆者は10年以上の付き合いがあり、少女の成長をずっと見てきた。少女の苦労を知っているがゆえに、今回のイジメ事件は心がえぐられる思いであった。
以前の校長は、少女をイジメから守ってくれていたが……
少女が6年生に上がった去年の4月、新しい校長が就任した。ここからが不幸の幕開けとなる。以前の校長は、子供好きで誰にでも平等に接する人物であると当時の関係者は語る。人権意識の高い校長は、少女のことも常にイジメから守ってくれていた。
しかし4月に新しい校長が就任してから事態は一変した。5月、数人の女子にクルド人少女がトイレに閉じ込められるという事件が起きた。のちの筆者の質問で、担任は「1人しかやっていない」と発言したが、事実究明をしていくうちに1人がドアを蹴飛ばし、3人が上からのぞく、残りは少女を罵倒したり、はやし立てたりしたという事実がわかった。証言の違いを追及すると、担任は口を閉ざしてしまうだけであった。
これだけでもあってはならない恐ろしい出来事だが、少女の不幸はまだまだ終わらなかった。辛いことはあってもなんとか学校に通い続けた。しかし今年の1月29日、徹底的に少女を追い詰める事件が起きた。
体育の授業で男女混合のサッカーが行われた。少女は、A君が自分のことを「あいつは邪魔」と言うのを聞いた。次の瞬間、少女はA君に突き飛ばされ、転んでしまった。その際、足を怪我して、痛みに少女は泣き続けた。
それに対しB君が、少女にサッカーを続行するよう指示した。少女は泣きながら「できない」と意思表示をしたが、聞き入れてもらえず無理やりサッカーをやらされた。当然、戦力にはならなかった。
次の授業のために少女は教室に戻ったが、自分の机といすが誰かによって倒されていた。自分で直してからいすに座り、痛みと悲しさのあまり机に顔をうずめ泣き続けた。
すると突然、何者かにいすを後ろに引っ張られ、少女は床に倒れ込んでしまった。やったのはB君であった。B君はサッカーの試合が散々だったのを逆恨みして、少女の背中を何度も蹴りまくった。泣いて嫌がる少女に対し、クラスメートが傍観しているなか、蹴りは容赦なく襲い続ける。
中にはB君に、
「お前の足が腐るから(蹴るの)やめろよー」と言う生徒さえいた。