川口市の小学校、学校ぐるみで“クルド人少女のイジメ事件”隠し

「卒業式だから……終わりだから、もういいです」

 男児はなぜか話し合いの場で泣いていて、少女に「お前のせいだ、殺すぞ」と言ったり、机を蹴ったりする場面もあった。それでも校長は男児を叱ることもなく「もう卒業式なんだからさ、どうしたいの?」と、少女に何度も詰め寄った。  相手の母親は「そっちのせいで卒業式を台なしにされた」と怒りをぶつけてきた。この場の雰囲気に耐えられなくなった少女は 「卒業式だから……終わりだから、もういいです」  と言わざるを得なくなり、泣きながら学校を飛び出した。そこへ声をかける先生は一人もいなかった。せっかく勇気をだして卒業式に参加したのに。その夜、少女は37.8℃の熱をだしてしまった。

少女に“お守り”と持たせておいた小型カメラにイジメの証拠が

 後日、川口市教育委員会に支援者が電話したところ、校長から卒業式の件は「少女の勘違い」という報告があったというのだ。少女は校長たちの圧力で「もういいです」と言わされたが、男児の言い分についてはまったく認めていない。なぜそこまで少女に対してひどいことができるのか。少女が外国人だからなのだろうか。  しかし、支援者が卒業式の日に「お守り」と称して少女のポケットに小型のカメラを入れていた。その動画を後日、証拠として校長に突きつけた。日本語教師は以前「ぼそぼそと言っていて聞こえなかった」と言っていたが、その動画を確認すると、男児は誰にでも聞こえるような大声で少女の悪口を言っていた。  あるクラスメートからも「先生のそばで、大きな声で言っていた」という証言を得ることもできた。日本語教師もまた、少女を裏切ったことになる。  ここまで記事を読んで、いったいどれだけの大人たちがウソをついたのか、おわかりいただけるだろうか。本来、学校とは子供に「ウソはいけないと」教える存在なのではないのだろうか。どれだけ多くの教師をはじめ大人たちが、少女をよってたかって傷つけたのか。  少女の件は、まだ何ひとつとして解決していない。被害者の声を黙殺するこの学校のやり方を見過ごしては、地獄を味わう子供は後を絶たなくなる。 <文/織田朝日>
おだあさひ●Twitter ID:@freeasahi。外国人支援団体「編む夢企画」主宰。著書に『となりの難民――日本が認めない99%の人たちのSOS』(旬報社)など。入管収容所の実態をマンガで描いた『ある日の入管』(扶桑社)を2月28日に上梓。
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