見えない全体像。カオス化するメキシコのネット世論市場
前回紹介したベネズエラはマイナンバーのようなマザーランドカードのワレットを使って国民をトロール化しようとし、仮想通貨まで導入した(参照:
『激動のベネズエラ。斜陽国家の独裁者を支持すべく、暗躍するネット世論操作の実態』:HBOL)。ラテンアメリカは世界有数のネット世論操作激戦区あるいは実験場となりつつある。
そしてメキシコの現状にはいろいろな疑問がある。
・選挙にロシアの干渉はあったのか? それはどのような形で行われたのか? あったとすればオブラドール支持だったと考えられる。もしそうなら現在ロシアの影響は大きくなっている。
・犯罪組織と結託しスパイウェアPegasusを操っているのは政府の誰なのか? その目的は?
・ネット世論操作産業の規模と世界に広がるネットワーク、政治家、犯罪組織とのつながり
・ハッキンググループとのつながりはどうなのか? 2016年3月31日のBloomberg Businessweekの記事”
How to Hack an Election“によれば前回のメキシコの大統領選挙では依頼を受けたハッカーグループが当選のためのハッキングを行っていた。昨年の選挙ではどうだったのか?
同国のメディやジャーナリストの努力を見ていると、これらの点が繋がって線となり面として全体像が見えてくるのは遠いことではないような気がする。
◆シリーズ連載「ネット世論操作と民主主義」
<取材・文/一田和樹
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いちだかずき●IT企業経営者を経て、綿密な調査とITの知識をベースに、現実に起こりうるサイバー空間での情報戦を描く小説やノンフィクションの執筆活動を行う作家に。近著『
フェイクニュース 新しい戦略的戦争兵器 日本でも見られるネット世論操作はすでに「産業化」している――』(角川新書)では、いまや「ハイブリッド戦」という新しい戦争の主武器にもなり得るフェイクニュースの実態を綿密な調査を元に明らかにしている