「ご飯論法」が新語・流行語大賞トップテンに選出されるまで<短期集中連載・「言葉」から見る平成政治史>

「政治とメディア」に関する3つの時代区分

表1. 変容する政治とメディアの関係

表1. 変容する政治とメディアの関係。筆者作成

 拙著『メディアと自民党』(角川書店)、『情報武装する政治』(KADOKAWA)では近年の政治とメディアの関係性の変容と、2013年の公職選挙法改正に伴う広範なインターネット選挙運動が認められるようになった状況に対する政党の対応過程、ジャーナリズムの変化等を論じながら、これまでの拙著のなかでおよそ20年の自民党を中心とした日本政治とメディアの関係性がお互いに文脈を共有し緊張関係を有しながらも融通し合う「慣れ親しみの関係」から、相互に直接的な影響力を行使しようとする「対立・コントロール関係」への移行に言及した。  小選挙区制の導入、インターネットメディアとモバイル化の進展、すなわちソーシャルメディア時代の政治の情報環境、メディアとの力学の変化にいち早く対応したのは自民党であって、本来挑戦者であるはずの野党ではなかった。また2000年代において、試行錯誤を試みたのも途中野党経験を積む自民党だった。失敗をバネに新しいメディア環境への適応を試み、メディア、なかでもネットに流通する言葉――非言語の情報発信を含む――の開発に注力する。未だ自民党には及ばないものの各政党も同様の戦略、戦術、組織の開発に注力する。かくして平成の時代を通して政治の情報発信の戦略と戦術は洗練され、いっそうスマートなイメージと言葉を使うようになった。ただし、それらは取り繕われたものでもあり、しばしば綻びが生じているようでもある。先の政権を中心に据えた4つの時代区分と、政治とメディアの関係を念頭に置いた3つの区分は重複している箇所と重複しない箇所があるが、通底する問題意識として共有したい。  なおここで取り上げる「広義の政治に関する語」とは、厳密には経済や行政に関わる場合も含めて相当程度広義に捉えたい。なかでも政治を映す鏡という意味では、度々メディアに関する用語に言及することになる。  また単に用語を解説するにとどまらず、その後どのように展開したのか、時代の端境期から捉え直すとどのような連続性を持ったのか/持たなかったのかということに言及する。 「公式の政治の言葉」について知りたければ、例えば各々の政権の所信表明演説を紐解けばよい。しかし前述した社会と政治の関係性とその総体や変容に注目し、平成の政治、なかでも連続した社会における政治の捉えられ方のようなものに関心を向けるとき、それらの非公式な政治の言葉が時々の時代において一瞬で消費され、その後顧みられなくなっているものが少なくないとしても、そうであるからこそ連続的に並べて眺め直すことで、社会から眼差した政治の一側面を把握することができるのではないか。

「亥年選挙」の年に

 ここで遠く念頭に置かれているのは、卓越した政治記者として知られた朝日新聞社の石川真澄記者の、かつての『朝日ジャーナル』での連載をまとめた『政治のことば』という一冊の書籍である(石川真澄『政治のことば 状況の奥を読む』朝日新聞社、1987年)。  石川記者といえば「亥年選挙」という亥年の与党苦戦を説明する経験的な仮説の提唱者としても知られている。統一地方選挙は4年に一度実施され、参議院選挙は3年毎に半数ずつ改選され、両者は12年に一度の亥年に同じ年に実施されることになるが、組織依存度の高い政党は一年間に二度組織を動かさすため組織が疲弊するのではないかという仮説を提唱した。  平成が終わり、次の元号のもと新しい時代が始まる2019年はまさに亥年選挙の年でもある。亥年選挙風にいうなら、4月の統一地方選挙とともに平成は幕を下ろし、今夏の参議院選挙とともにポスト平成の時代を迎えることになる。 『政治のことば』の頁をめくると、石川記者は政治記者として深く政治のインナーサークルに属した知見を活かしながら、「保守本流」や「派閥」「解散権」といった数多の政治の公式の言葉を時代に寄り添いながら平易に紐解いたことがわかる。こうした石川記者の手腕に敬意を払い頭のすみに置きながら、次回以後具体的に平成政治を表現した非公式の言葉の数々を紐解いてみたい。 <文/西田亮介> にしだ りょうすけ●1983年、京都生まれ。慶応義塾大学卒。博士(政策・メディア)。専門は社会学、情報社会論と公共政策。立命館大学特別招聘准教授等を経て、2015年9月東京工業大学着任。18年4月より同リーダーシップ教育院准教授。著書に『メディアと自民党』(角川新書)、『なぜ政治はわかりにくいのか』(春秋社)など
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