裁量労働制実態調査、やはり「不都合なことは聞かない」設計に! 調査票改定案を緊急提言

「不満」が表れにくい問い方の問題

 さらに問題がある。問17の(1)の満足度の問い方だ。「とても満足している」「満足している」「どちらとも言えない」「不満である」「とても不満である」の五択なら、あなたならどこに〇をつけるだろう。多くの調査において、「どちらとも言えない」に〇がつく割合が高くなる。そのため、「どちらとも言えない」という選択肢をあえて設けない工夫が多くの調査において行われている。  先行調査である労働政策研究・研修機構の「裁量労働制等の労働時間制度に関する調査結果 労働者調査結果」(JILPT調査シリーズNo.125)では、裁量労働制の適用を受けていることへの満足度を問う設問(Q29)の選択肢は、「満足」「やや満足」「やや不満」「不満」の四択だ(なお、結果は「満足」31.5%、「やや満足」34.1%、「やや不満」17.7%、「不満」5.7%、不明11.0%)。  今回の調査も、仕事の裁量の有無や業務負荷の高さなどを問う設問とは別に満足度を問う形にした上で、先行調査と同じ聞き方で「満足」「やや満足」「やや不満」「不満」の四択とするべきだ。  そうすることによって、先行調査の結果と比較することが可能となる。「どちらとも言えない」に回答が大きく偏る可能性も、避けられる。  さらにJILPT調査では「満足」「やや満足」となっていた選択肢が、今回の調査案では、「とても満足している」「満足している」になっており、「やや不満」「不満」となっていた選択肢が、今回の調査案では、「不満である」「とても不満である」と、より強い表現になっている。これではなおさら、「どちらとも言えない」に誘導されてしまう。  「どちらとも言えない」に回答した者は、満足の理由も不満の理由も答えない調査設計となっているため、このままでは、多くの回答者が「効率的に働くことで、労働時間を減らすことができる」といったメリットの項目も、「仕事に裁量がない」「業務量が過大である」「業務の期限設定が短い」「労働時間が長い」といったデメリットの項目にも、回答しない結果となってしまう。  これは、あまりにももったいない問い方だ。裁量労働制のメリットもデメリットも、裁量労働制適用労働者全員に聞く調査設計に変更すべきだ。そうして初めて、裁量労働制の実態を的確にとらえることができる。
次のページ
まだ変更は間に合う!
1
2
3
4
5
6
7
バナー 日本を壊した安倍政権
新着記事

ハーバービジネスオンライン編集部からのお知らせ

政治・経済

コロナ禍でむしろ沁みる「全員悪人」の祭典。映画『ジェントルメン』の魅力

カルチャー・スポーツ

頻発する「検索汚染」とキーワードによる検索の限界

社会

ロンドン再封鎖16週目。最終回・英国社会は「新たな段階」に。<入江敦彦の『足止め喰らい日記』嫌々乍らReturns>

国際

仮想通貨は“仮想”な存在なのか? 拡大する現実世界への影響

政治・経済

漫画『進撃の巨人』で政治のエッセンスを。 良質なエンターテイメントは「政治離れ」の処方箋

カルチャー・スポーツ

上司の「応援」なんて部下には響かない!? 今すぐ職場に導入するべきモチベーションアップの方法

社会

64bitへのWindowsの流れ。そして、32bit版Windowsの終焉

社会

再び訪れる「就職氷河期」。縁故優遇政権を終わらせるのは今

政治・経済

微表情研究の世界的権威に聞いた、AI表情分析技術の展望

社会

PDFの生みの親、チャールズ・ゲシキ氏死去。その技術と歴史を振り返る

社会

新年度で登場した「どうしてもソリが合わない同僚」と付き合う方法

社会

マンガでわかる「ウイルスの変異」ってなに?

社会

アンソニー・ホプキンスのオスカー受賞は「番狂わせ」なんかじゃない! 映画『ファーザー』のここが凄い

カルチャー・スポーツ

ネットで話題の「陰謀論チャート」を徹底解説&日本語訳してみた

社会

ロンドン再封鎖15週目。肥満やペットに現れ出したニューノーマル社会の歪み<入江敦彦の『足止め喰らい日記』嫌々乍らReturns>

社会

「ケーキの出前」に「高級ブランドのサブスク」も――コロナ禍のなか「進化」する百貨店

政治・経済

「高度外国人材」という言葉に潜む欺瞞と、日本が搾取し依存する圧倒的多数の外国人労働者の実像とは?

社会