裁量労働制実態調査、やはり「不都合なことは聞かない」設計に! 調査票改定案を緊急提言

回答者が限定されてしまう調査設計

 このように、裁量労働制の拡大に向けた政府方針に合わない不都合な結果が出そうな設問がいったんは削られそうになったものの残った経緯はあるのだが、第4回検討会でほぼ確定した調査票案に、なお重大な問題があることが、会議を傍聴していた伊藤圭一氏(全労連 雇用・労働法制局長)の会議後の指摘により明らかになった。  裁量労働制適用労働者の仕事の裁量のなさや、業務負荷の高さなどに関する設問の回答者が、調査設計上、全回答者のうちの一部の者のみに限定されてしまっているのだ。  具体的に見てみよう。裁量労働制の適用労働者に対する調査には、ほぼ同じ文言で仕事の裁量のなさや業務負荷の高さなどを問う設問が2か所、設けられている。第4回検討会 資料2-3問13の(3)問17の(3)であり、選択肢は次の通りだ(問17の(3)は、それぞれの選択肢の語尾が「・・・ため」となっているが、その他の表現はほぼ同じ)。 ●仕事に裁量がない(又は小さい) ●当初決まっていた業務でない業務が命じられる ●業務量が過大である ●業務の期限設定が短い ●みなし労働時間の設定が不適切である ●労働時間が長い ●休暇が取れない ●賃金などの処遇が悪い ●人事評価が不適切である ●その他  これらは、裁量労働制を適用された労働者の実際の働き方が、裁量を発揮して柔軟に働くことができるという制度趣旨にかなった働き方になっているのか、それとも制度趣旨に反し業務負荷が高く、裁量を発揮する余地が小さく、長時間労働を強いられる働き方になっているのか、その実態を問う重要な設問だ。  にもかかわらず、これらの設問は、裁量労働制適用対象者全員に尋ねる設計になっておらず、かなり限定された対象者だけに問う形になっているのである。
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潜在的な苦情を隠す調査設計
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