終わりなきカルト2世問題の連鎖<短期集中連載・幸福の科学という「家庭ディストピア」1>

宏洋氏

宏洋氏のYouTube動画より

 12月8日、幸福の科学教祖・大川総裁の長男である宏洋氏がフジテレビの深夜番組に出演し、教祖長男としての幼少期を暴露した。  宏洋氏は今年8月、教団から独立して「YouTuber」デビュー。以降、大川総裁や教団への批判を繰り返している。これに対して教団側は反論声明を公式サイトに掲載するほか反論動画を公開するなどして、「YouTube対決」に。さらに大川総裁は宏洋氏の守護霊を召喚し教団職員になじらせる「霊言」を連発している。  宏洋氏は映画製作や芸能活動を志望しているが、教祖の息子であることがマイナスになるとも語っている。教団を離れ社会の中で生きていこうとする「教祖2世」の苦悩だろう。一方、一般信者の2世の中には、宏洋氏の苦悩などむしろ贅沢とさえ思えてくるような苦しい生活を強いられている人もいる。血のつながった家族を殺してしまった2世もいる。  もともと「家庭ユートピア」の実現を謳っていた幸福の科学において、いかにして「家庭ディストピア」が形成されていったのか。「2世問題」という切り口から考えてみたい。

「教祖2世」の苦悩

「私は大川隆法総裁を信仰してませんし、彼のことを神だと思ったことは一度もありません」(YouTubeより=教団の抗議によりすでに削除)  宏洋氏がYouTubeで公開した一連の動画の中での、宏洋氏自身の発言だ。教団はウェブサイト上に掲載した声明文で、2011年に宏洋氏が教団内で行った講話を引用して反論。YouTubeでも同趣旨のことを語る教団幹部の動画を公開した。 〈宏洋氏は「エル・カンターレは、絶対に、何があっても、あなたがたを見てくださっている。これだけは、確信して言えます」「少しでも、エル・カンターレのお役に立ちたいと、いうふうに考えておりますので、みなさま共に、頑張っていきましょう」と強く信仰心を語っています〉(10月5日付声明文より)  宏洋氏は、これに対して、こう反論した。 「仕事としてそういうことをやったということ」(YouTubeより=同)  信仰がないのに信仰があるかのような態度で信者を煽る「仕事」をしていたというなら、詐欺ではないか。幸福の科学に多額の布施などをした挙げ句に脱会した元信者たちの間では、宏洋氏に「加害者」側だったことについての総括を期待する声も聞かれる。無理もない話だ。  しかしそれはそれとして、そのような立場に置かれてしまった宏洋氏には、やはり同情する。教祖の長男として生まれ、おそらく一時は後継者としての期待も背負いながら、大学生のうちから教団映画の製作に関わり、幹部として信者の前で講話などをし、教団の芸能プロダクションの社長を勤めてきた。  同族企業のボンボンとも少し違う。何せ、幸福の科学において自分の父親は文字通り「神」なのだ。 「その家に生まれてしまったので、生まれた時からずっと教育をされて、それが当たり前だと教え込まれて生きてきたわけですけども、生きていくうちに私の個人の考えと一致しない部分がかなりいっぱい出てきてしまったので。幸福の科学の教えの中に、ちょっとやっぱりこれは賛同しかねるかなという部分が多かったかなというのがあります。(略)大川隆法総裁が主エル・カンターレであり至高神であるという教義なんですけども、総裁と同じことを考えないといけないっていう、ここが一番、ちょっとダメだったのかなというところで。いろんな物事に対して大川総裁が物申してると思うんですけど、それと同じことを思ってなきゃいけないってところが、これはやっぱりちょっとね」(YouTube動画より=同)  教団側は前出の声明文の中で、「当教団にそのような教義はない」と反論している。幸福の科学の元職員であるAさんが言う。 「そういった教義は、なくはないです。幸福の科学では“正しき心の探究”をスローガンとしており、それは“神仏の心の探究”であると定義されています。そしてその“神仏の心を我が心とする”ことが信仰者の道であると教えています。大川を宇宙の根本仏としている幸福の科学において、“神仏の心”とは即ち大川の意思であり、その判断に疑念を抱くことを弱い“人間心”として恐れ、否定します。だから信者は迷ったとき、“先生には深いお考えがあるに違いない”として思考停止し、“人間心”を捨てて、“大川の心を我が心とする”のです。幸福の科学では、こうして信者の金太郎飴化が促進されました」  教団が表向き、そのような教義はないと言ったところで、宏洋氏が生まれ育った教団の、これが実情のようだ。  YouTubeでの宏洋氏の言動には、非常識な部分や、幸福の科学をやめた元信者たちへの配慮に欠けているように思える部分がないわけではない。詳細は割愛するが、これらは幸福の科学という集団の非常識さと非常によく似た類いの非常識さだ。宏洋氏を非常識だと非難するのは簡単だが、人生の大半を教祖の息子として教団の中で過ごしてきたがゆえのものだという点も意識する必要がある。いわゆる「2世問題」だ。 「2世問題」として見るということは、「2世は何も悪くない」ものとして扱うということではない。仮に2世に非常識さなどがあったとしても、非常識さを身につけてしまった境遇を踏まえて、支援や社会復帰の道筋を考えるべきとする立場だ。  宏洋氏の場合、分派して新たな宗教団体を作ろうとしているわけでもなければ、幸福の科学を正当化する「歴史修正」を吹聴しているわけでもない。著名人を利用して自分の父親への批判を和らげようなどという工作をしているわけでもない。彼が社会で活躍することは、社会にとって何の害悪にもならない。  こうした境遇にある宏洋氏が、スムーズに自立できる社会であってほしいと思う。
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元2世信者が疑問を抱くようになったきっかけとは
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