被害がなかった上流域との比較でより明確になった「野村ダム」下流域の被害

被害を免れた宇和盆地

 肱川源流から8kmほど南下すると宇和盆地の中心部で、多少広くなった肱川の周囲に広大な農地が広がります。農地は2006年完成の基盤整備によって中四国では最も広大な1.2ヘクタールの区画とされています。  宇和盆地では7月7日に大規模な水害被害を受けたという報道はなく、実際に水害の痕跡を見つけることはできませんでした。  宇和盆地を南下し、商業、行政の中心である卯之町を過ぎ、宇和盆地の南東側の外れにある道の駅どんぶり館までくると肱川はたいへんに立派な姿となります。この地点で肱川源流の砂防ダムから約12kmで、野村ダムまでの中間点に近いです。  更に宇和盆地を県道29号線に沿って東進すると、肱川は山間地に入ってゆきV字渓谷を形成します。その手前で肱川は再び狭隘になってゆきますが、堤防が整備され、橋梁が高くかけ替えられているなどの治水対策が見られます。  宇和町皆田(かいだ)から宇和町下川(ひとうがわ)にかけて土地が河床に対して高くなりますが、橋梁の高さが十分に高くされていないためか、ようやくここで洪水の痕跡を見つけることができました。  下川橋とその上流側の橋では、橋桁と橋脚の間に洪水による塵が溜まっており、橋桁が水に浸かっていたことがわかりました。  これにより、宇和盆地での肱川が堤防越水に近いところまで増水していたことがわかりましたので、聞き取りをしました。  それによると、7月7日の大雨では、宇和盆地において肱川は堤防のぎりぎりまで増水し、氾濫までの余裕があと1mを割る状態だった。しかし野村ダムが緊急放水(ただし書き操作)したために宇和盆地では大きな氾濫が起きることなかったとのことでした。  橋梁のたかさ、堤防の整備状態から見て、宇和盆地での肱川の治水対策は、野村ダムのサーチャージ水位(※洪水時にダムが一時的に貯留可能な最高水位)に合わせて設計されていることがわかります。これは当然のことで、ダムは堤体越流を起こすと高確率で決壊しますので、ダム湖の水位がサーチャージ水位を超える場合はただし書き操作に入り、流入する水量と同量の水を放水します。従って、ダム上流の最高水位はダムによって一義的に定まります。
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野村ダムで明確に分かれる流域の被害
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