被害がなかった上流域との比較でより明確になった「野村ダム」下流域の被害
第5回、第6回、第7回で報じたように、現地の様子をこの目で見ることで、肱川の大水害は紛れもなくダム最優先の治水行政による行政資源の配分の失敗の産物だということが明らかになってきました。
今回は、肱川源流から野村ダムまで取材した様子をリポートします。
肱川は、河川延長103kmですが、その河口と源流は直線距離で18kmとたいへんに接近しており、長浜の肱川河口から西予市宇和町久保の肱川源流までは国道56号線を使って約30km、50分程度です。
宇和町久保の肱川源流は、宇和盆地の北の外れにあります。宇和盆地は肱川本流、支流によって形成された扇状地の集合体で、大洲盆地と並んで南予では数少ない平地の開けた肥沃な土地です。
宇和盆地の標高は200mと、野村ダム湖水面よりも30~40mほど標高が高いために、水源は多くを溜池に頼っています。そのため、宇和盆地には数多くの溜池が見られます。
宇和盆地には稲作地帯が広がっており、盆地気候であるために稲作の好適地ですが、有史以来水不足に悩まされ続けていました。それが解消したのは2006年の愛媛県基盤整備事業によるもので、農業排水を下流の溜池に貯水し、上流の関地池にポンプアップすることで農業用水の循環、再利用を行っています。
肱川が源流~上流であるために流量が少なく、農業用水としては水資源量が全く足りないために今世紀にはいるまで水資源問題に悩まされ続けてきたとのことです。
肱川源流は、宇和町久保の谷あいにあり、砂防ダムによってダム湖が形成されています。ダム下流にはたいへんに小さな用水路のような肱川本流が流れており、25km下流の野村町の惨状が別世界のようなのどかな風景が広がっています。
2018年7月7日、未曾有の豪雨によって大きな被害が生じた愛媛県の肱川(ひじかわ)水系における現在の被害状況をお伝えしています。
野村ダムを過ぎ、肱川源流へ
この連載の前回記事
2018.11.27
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