肱川大水害の災害現場。死者も出た地域の傷痕は今もなお深い

建屋が一棟流失した肱川中学校

 河辺川左岸、肱川右岸に挟まれた鹿野川大橋の対岸に肱川中学校があります。肱川中学校はグラウンドの川岸で標高50mとなっており、本校舎が標高60mにあります。グラウンド面に立地している東校舎と体育館は一階が水没、本校舎は無事だったようですが、スクールバスが4台すべて水没し、8月2日まで全校出校ができなかったとのことです。また、建屋が一棟流失しています。  とても魅力のある校舎ですが、老朽化と耐震性不足から今年度いっぱいで取り壊し、建て替えとのことです。生徒数もかつての600人超えから現在は、全生徒40人に減少しており、校舎の規模が明らかに過大です。

肱川町鹿野川地区

 河辺川左岸を更に進むと、肱川町鹿野川地区にでます。かつて、大洲藩、宇和島藩、新谷藩の支配域が重なり、土佐藩との交通の要衝でもあったことから、交易、物流、軍事拠点として栄えた町です。現在も依然として付近一帯の行政、商業機能が集中している集落です。 [西日本豪雨]「大洲・肱川 一歩ずつ前へ・・・存亡の危機に立つ集落」南海放送の夕方ニュース『News Ch.4』7/27放送  この地区は標高50~60mにありますが、地区全体が二階まで水没しており、水は標高55m以上まで来ていたことがわかります。そのため、大洲市肱川町の支所、公民館、図書館、保健センターが一度に機能を失い、被災直後には災害復旧の拠点を失っていました。  子どもたちは、肱川公民館を遊び場にし、元気に飛び跳ねていますが、商業街区の復旧はたいへん遅れており、日が暮れると一部の家屋を除き灯火が見当たりません。  現在、標高200mの山上、肱川風の博物館などに隣接した大駄馬地区に仮設住宅3棟15戸が提供されていますが、自家用車がなければ生活が成り立ちません。(参照:愛媛豪雨災害 大洲市、応急仮設住宅26日に抽選へ 2018年8月21日愛媛新聞)  肱川町鹿野川地区の洪水被害は、前回ご紹介した下石丸地区(肱川大和団地)や道の駅清流の里ひじかわと比較すると目立って大きく、小規模ながら官公庁、商業中心街区に該当するため、町そのものの機能が長期間失われていることとなり集落全体の存続にもかかわる深刻な状況です。  地形図を読む限り、前回ご紹介した下石丸地区や道の駅清流の里ひじかわ、肱川中学校と肱川鹿野川地区の標高はほぼ同一です。一方で、洪水被害には差が出ています。 肱川町下石丸地区 床下~床上浸水浸水 標高55m 肱川大和団地(下石丸) 被害なし? 標高58m 肱川中学校 床上浸水(2~3m程度) 標高50~60m 道の駅清流の里ひじかわ 床上浸水(2m) 標高50m 肱川町鹿野川地区 二階浸水(4~5m) 標高50~60m  鹿野川地区は、目立って標高が低いわけではありませんが、河辺川沿いの集落の浸水が激しく、バックウォーター(背水)によって被害が拡大していた可能性があります。  現在建設中の山鳥坂ダムは、河辺川のバックウォーターを抑止する働きが期待されますが、今回の規模の洪水では全く効果がありません。むしろ、洪水の長時間化によって鹿野川大橋が崩壊する可能性もあり、今回の水害規模を想定した場合、根本的に治水対策と町、河川の設計を考え直す必要があります。
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