11月にかき氷屋を開いて超速閉店。人気の料理研究家は何を学んだのか?<栄光なき起業家たち#2>

遠藤結万
「99%のスタートアップは失敗する」

 よく、そんな事が言われます。だから、失敗を恐れずに挑戦すればいいよ、とベンチャーキャピタリストは言うのでしょう。

 しかし、いつだってメディアに出てくるのは、1%の方ばかりです。大抵の「失敗談」すら、きらびやかな成功者の口から語られます。「あんなこともあったけど、大変だったよね」という「今はいい思い出」として。

 しかし、本当の失敗、取り返しの付かないような失敗こそが、一番大きな学びになるはずではないでしょうか?

 本連載は、「成功しなかった起業家」に焦点を当て、何をすべきだったのか、何を学んだのかを聞き取ることで、後に続く起業家に「学び」を残すことを目的としています。

五十嵐豪さん

五十嵐豪さん

「11月にかき氷屋をオープン」

 新井薬師前にあるオフィスで、料理研究家の五十嵐豪さん(@gogoigarashi)に話を伺いました。穏やかで、いつも笑顔を絶やさない人です。

「しかない料理」などを開発し、Twitter のフォロワー数も3万人を超えている大人気の料理研究家ですが、オープンした店舗を2か月で閉店させた、という経験を持っています。

 その理由を聞いたところ「かき氷屋を十一月にオープンしてしまった」からだそうです。

 どう考えても明らかに失敗しそうな、「十一月のかき氷屋」をオープンさせてしまった五十嵐さんは、その失敗から一体何を学んだのでしょうか?

――五十嵐さんは、20歳から料理研究家として活動されていますが、きっかけはなんだったんでしょう。

五十嵐:もともと公認会計士になろうと思って勉強していたんですけど、俺本当に公認会計士やりたいんだっけ、ということで一日だけ考えてみようと思ったときに、わーっとあこがれの職業、かっこいい職業書いていって、バリスタとか、俳優とか、ミュージシャンとか。

――いろいろありますね。

五十嵐:全部やろうと思って。全部やるなら、カフェの中で俺は全部やろうと。

――なるほど、店で演奏したりとか出来ますからね。

五十嵐:ただ、ちょっと料理人は違うなと思った時に、料理研究家という職業を知って。お店もなく、自分のやりたいことを自在にできると。

――ということは、今の職業の出発点もカフェだったんですね。

五十嵐:そうなんですよ。なので、自分の中ではカフェは完了していたんですが。ときどき出てくるんですよ(笑)。

――かき氷屋を開くことになったのは、どういうきっかけだったんでしょうか?

五十嵐:あるレセプションパーティーで、カフェバーをやってるビルオーナーの方と話をしている時に、「僕もカフェ作るのが夢で、今の仕事をやってるんですよね」みたいな話をしたら、「やる?」って思いがけない軽さで言っていただいて(笑)。
何度か打ち合わせして、その方の持っているビルの二階を家具、内装をそのままで、やらせてもらうことになったんです。

――その時は「来た!」って感じだったんでしょうか?

五十嵐:来ましたね(笑)。でも、飲食のオペレーションとか、立地選びとか、内装とか、全然わからないんですよ。これが。意外と料理研究家と飲食店経営者って、遠いんです。

――料理を作る方ですもんね。

五十嵐:しかも、立地が選べる状況でもないので。

 飲食店をスタートする人にとっては、多分立地ってすごく重要な情報だと思うんですけど、僕はそこはもう考えなくて、その場所で何が出来るかしか考えなかったんですよ。しかも人通りが割と少ないところで。

 最初、オープンもなるべく早くしたいし、店も結構狭くて、そんなにキャパシティがないので、どういう業種がいいかなと考えていたんです。でも、たまたまその夏にかき氷をプロデュースする仕事があって、業務用のかき氷機を買ったんですが、全然使わなかったんですね。行き場をなくした業務用のかき氷機があるので、これを使おうと(笑)。

――たまたま来た立地の話と、たまたまおいてあったかき氷機が合体して、かき氷屋さんが出来ちゃったんですね。

五十嵐:そしたら、いろいろ手間取ってるうちにオープンが冬になったんです(笑)

――それにしても、なんでそんなに遅れたんですか?

五十嵐:そもそも、この話があったのが8月だったんですよ。準備して9月か10月に、と思っていたら、11月になってしまって、結局2か月で店を閉めたという話ですね。

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