考える前に動いても、考えすぎても失敗する。ペットの幸せを夢見た起業家は、何に躓いたのか?<栄光なき起業家たち#1>
「99%のスタートアップは失敗する」――
よく、そんな事が言われます。だから、失敗を恐れずに挑戦すればいいよ、とベンチャーキャピタリストは言うのでしょう。
しかし、いつだってメディアに出てくるのは、1%の方ばかりです。
大抵の「失敗談」すら、きらびやかな成功者の口から語られます。「あんなこともあったけど、大変だったよね」という「今はいい思い出」として。
しかし、本当の失敗、取り返しの付かないような失敗こそが、一番大きな学びになるはずではないでしょうか?
本連載は、「成功しなかった起業家」に焦点を当て、何をすべきだったのか、何を学んだのかを聞き取ることで、後に続く起業家に「学び」を残すことを目的としています。
今回、話を聞いたのは林載允(イム・ジェユン)さん。
――もともと、なぜ起業しようと思ったんですか?
私、小さい頃からビル・ゲイツになりたかったんです(笑)
――というと……?
もともとは外資系コンサルティングファームにいて、死ぬほど働いてました。それはそれですごくやりがいがあったんですが、体調を崩したときに、ずっとコンサルでやっていくかどうか考えたんです。
生まれた以上、名前を世界の中に残したいなと思って、それはサラリーマンでは無理だなと思って。
――この事業にたどり着くまでは、どういう経緯があったんでしょうか?
いろいろな事業をトライ・アンド・エラーしていました。ただ、どれもしっくり来なくて。自分事じゃないと、なかなかゴーサインが出なかったんです。
ちょうどその時じゅん(愛犬)を迎えたんですが、その時にいろいろ勉強して、愛玩動物飼養管理士の資格を二級を取ったんです。
――すごいですね(笑)。
でしょ(笑)。
ペットを飼っている人も増えているけど、知識がないだけでも、ペットにとって良くないことをしてしまうんです。そういう事実に気が付きました。
それで、ペット向けのサービス、ということで事業の方向性が固まったんです。
――株式会社MORESQUは、何を目的とした会社だったのでしょうか?
ペット向けのIOT、スマート体重計を企画・開発していました。
――スマート体重計?
犬を飼ったことがある方なら分かると思うんですが、ワンちゃんはなかなか体重計に乗ってくれないんです。
大型犬にもなると、そもそも抱っこして乗せるのが大変で。私、大型犬を体重計に乗せたとき、一度ヘルニアになったことがあるくらいです(笑)。
トイレをしながら、無理なく体重を図ってくれるデバイスというのが、このスマート体重計のコンセプトでした。
MORESQUは韓国の企業と一緒に作った合弁会社なのですが、この製品の企画・開発を行って、量産化を目指していました。
中目黒のカフェで、彼女は愛犬のじゅんくん(1歳半)と共にインタビューを受けてくれました。明るく、ハキハキと喋り、事業を清算したという悲壮感は全くありません。
「切り替えるのが得意なんです」
彼女はそう言います。
ソウル出身。高校までを韓国で過ごし、早稲田大学政治経済学に進学。その後、外資系コンサルティングファームに就職し、起業。
トリリンガルで、容姿端麗。ロースクールに通い弁護士を目指す。はたから見れば、すべてを手に入れたパーフェクト・ウーマンです。
一見、成功を約束されていたように見えた彼女は一体、何を目指し、なぜ挫折したのでしょうか?
ビル・ゲイツになりたかった
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