裁量労働制の拡大に向けた政府の再挑戦が始動。結論ありきを許すな
この今年2月22日の岡本議員と加藤大臣のやりとりを、前述の村山課長の説明と読み比べてほしい。加藤大臣は、調査結果を隠蔽した事実を、ねじまげて答弁していることがわかるだろう。
そしてどうやら先日9月20日の「第1回裁量労働制実態調査に関する専門家検討会」でも、同様の「ねじまげ」あるいは「隠蔽」があったようなのだ。前述の小島委員が、裁量労働制を審議した労働条件分科会では、JILPTの調査については、ほとんど中身を検討されていないと聞いているが、なぜか、と問うたのに対し、事務局は、初めて分かった結果については労政審に出して議論した旨を返答したようなのである。
確かに満足度などの結果は出された。しかし裁量労働制の方が労働時間が長いといった、裁量労働制の拡大という政府方針に合わない不都合な結果は提出されず、それらを含む冊子全体も提出されなかったのだ。このことは直視され、問題にされなければならない。にもかかわらずその問題に今の検討会の事務局も向き合わないとしたら、同じように不都合な事実は伏せられ続ける。不都合な実態が表面化しないように、新たな実態調査では、あえて聞かない、設問を設けない、ということにもなりかねない。
第1回の検討会では、JILPTの調査結果のすべてが冊子ごと、電子資料として提供された。はじめて調査結果の全体像が公式の会議の場に出たことは評価されるべきだが、ペーパーレス会議で電子資料として提供されたのみで、労働時間にかかわる項目の調査結果が検討会の場で委員の間で確認されるようなことはなかったようだ。
今後の調査設計に向けては、まずはこのJILPT調査の結果が検討されるべきだ。厚生労働省の要請調査でありながら、なぜその結果が組織的に隠蔽されたのかの経緯の検証も含めて。
今のうちに指摘しておきたいことは他にもたくさんあるが、長くなってきたのであとは簡潔に箇条書き的に記しておきたい。
裁量労働制のデータの「異常値」問題について国会審議中に独自に個票データを分析し、ブログで問題点を指摘されてきた東北大学の田中重人先生(ツイッターのアカウントは@twremcat )は、今回の検討会の議論の前提として、まずは裁量労働制について、幅広く既存の調査結果や研究結果のサーベイを行い、その結果を踏まえて新たな調査を設計すべき、と提言されている。そして、提言されるだけでなく、みずから文献収集に乗り出されている。
検討会の事務局の第1回資料には、平成25年度労働時間等総合実態調査とJILPTの調査だけが「裁量労働制に関する過去の調査について」で紹介されているが、田中先生の探索では、社会経済生産性本部 (1995)の「『裁量労働制に関する調査』報告書」なども見つかっている(現物未確認)。
今の事務局の検討会の進め方だと、「何を」調査するかは事務局が提案し、「どう」調査すべきかを委員が検討する、という方向になる危険性がある。しかしそれだと、「何を」調査するかの出発点において、裁量労働制を拡大したいという政府の意図とあわない調査項目は、そもそも設定されない恐れが高い。
適切な実態調査を踏まえれば、裁量労働制は拡大よりもむしろ規制強化が望ましいということになる可能性もある。実態調査は、政府方針とは独立して行われなければならない。そのためには、既存の調査結果や研究結果のサーベイは重要だ。
それに関して、もう一つ重要な指摘を行っておきたい。
幅広い実態調査や先行研究を踏まえた調査設計を
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