私設原発応援団たちによる、間違いだらけの「泊原発動いてれば」反論を斬る

論旨の土台も枝葉も間違ってる宇佐美氏の反論

 なお、宇佐美氏の私への反論は、そもそも論理的に泊発電所の稼働というものはあり得ないという拙論に対して、乾電池の組み合わせの如く「送電網」の状態や性能、各発電所の特性を無視して組み合わせ、辻褄を合わせるものですので、論旨の土台も枝葉も誤っています。  土台については拙稿で繰り返し繰り返し指摘してきています。まずきちんと拙稿を読んで理解しましょう。参考文献・資料などは可能な限り提示しています。  枝葉については、既に多くの方から誤りや矛盾点の指摘がありますが、私からも簡単にその誤りを指摘します。  大前提として、北海道電力が泊3の適合性審査を合格させることが出来た異世界を想定します。 ●宇佐美氏による第一案(発災前) 原子力 泊3   900MWe 石炭  厚真4  700MWe 重油  知内1,2 700MWe 重油  伊達1,2 700MWe  第1に、深夜早朝の電力需要閑散期に、重油を全出力で焚いていると言う想定がおかしいです。北海道電力にとって苫東厚真2、4号機は最大の稼ぎ頭であって、苫東厚真2を止めて重油を2か所全出力で焚いていることはあり得ません。また、この想定では、石油火力の出力追従余力を使い切っていますので、苫東厚真4が震災停止した途端に泊3は停止します。被災後17分間動き続けた苫東厚真1が停止中ですので中央給電司令所が対応する間もなく、ほぼ同時に全道停電します。この場合、泊3は外部電源を直ちに喪失したことになります。(現実の震災では、中央給電司令所が泊3への最優先の送電を試みていたと見られる。)  第2に、宇佐美氏は“「この組み合わせが不自然で経済性を考えれば厚真は130万kwのはずだ」という人もいるかもしれないが、そもそもそのようなことは断定しようもないので、反証としてはこれで十分であろう。”と述べていますが、とんでもない屁理屈です。  電力会社はその時々で最適の経済効率を求めて発電します。宇佐美氏の案の前提条件ならば、苫東厚真の定検周期にもよりますが、苫東厚真1、2、4の最低限、どれか2つの組み合わせまたは全てで発電します。余剰電力は揚水発電所(揚水)で蓄電します。石油火力の発電原価は石炭火力の概ね2倍です。現在は、原油価格が高騰していますので、更に高くつきます。そんなものを深夜にフルパワー運転する大手電力会社はこの世に存在しません。正当な理由なくそのようなことをすれば、株主代表訴訟を提起される前に経産省によって制裁的行政指導を受けるでしょう。  第3に、宇佐美氏は調整余力が不足した場合には“出力が足りないというならば、奈井江35万kwを加えてもらっても結構だ。結論は変わらない。”と記しています。確かに結論は変わりません。奈井江発電所は起動できず、北海道は3時10分ごろに一挙にブラックアウトするでしょう。理由は簡単です。奈井江発電所は石炭火力です。北海道電力は、本来出力調整に向かない石炭火力を、旧式のものについては出力調整に用いています。これは北海道電力のベースロード向け電源偏重と言う電源構成の為です。そして石炭火力は、即時起動が出来ません。即時起動ができるのは一般水力と揚水で、次いで連系線です。石油火力や天然ガス火力は負荷変化率が5~10%/分と、出力追従性に優れますが、それでも起動には時間を要します。そして石炭火力は起動にたいへんに時間を要します。おおまかにはこうなります。 ●各発電方式による一般的な起動時間(点火→全負荷) 一般水力   数分 揚水     数分から十数分(運転状況による) 石油火力   60分前後 天然ガス火力 60分以上 石炭火力   6時間程度 原子力 一週間程度(条件によっては三日程度) (参考文献:山地康博 火力発電の技術動向 日立評論, Vol.69 No.10 pp.891- 1987/10 ほか)  なぜ、火発が瞬間起動できないかは、ボイラーの特性に依存しています。いろいろと書籍は出ていますが、一番簡単で宇佐美氏でも良くわかるのは、汽車のえほん(きかんしゃトーマス)シリーズ(ポプラ社)でしょう。正確さと言う点で絵にはいろいろと問題がありますが、ウィルバート・オードリー牧師の記述はたいへんに正確です。  次に宇佐美氏による第2案です。これは神戸大学の牧野淳一郎博士(@jun_makino)によって第1案の誤りが指摘された後、宇佐美氏による数多くの罵倒の後に差し替えられたものです。 ●宇佐美氏による第2案(発災前) 原子力 泊3    900MWe 石炭  厚真4   700MWe 石炭  奈井江1,2 350MWe 重油  知内1,2  700MWe 重油  伊達1,2  700MWe  これは数字があっておらず、答案却下なのですが(実は、第一案でも石炭火力が合計2GWeという表記があり本来はこれで答案却下)、善意に解釈して、奈井江、知内、伊達を出力調整運転していたと仮定します。  第1に、北海道電力で最高の経済性を誇る苫東厚真1、2、4のうち4号機だけ運転して、旧式で経済性に大きく劣る奈井江1、2を運転している。これはあり得ない。  第2に、経済性で最も劣る石油火力の知内1、2と伊達1、2を全機運転している。現実にはこれら石油火力のうち1基は停止中。出力追従運転用の石油火力を全機運転しているという状況は電力枯渇状況以外考えられない。特に9月は定検入りするユニットが多い。  第3に、奈井江1、2は出力調整運転をしているものの、石炭火力は負荷変化率がたいへんに小さく、1~1.5%/分でしかない。仮にタービンが中間負荷用に改良されていても5%/分発揮できるかは不明。  したがって、第2案でも負荷変動に耐え切れずに全道停電する可能性は排除できません。そもそもこのような経済性に著しく劣る電源運用は、私企業ではありえず、公営電力でもあり得ません。ただ、未来予知によって地震を予知していたならば、あり得なくもないですが、その場合はもっと別の手を考えます。  これら第1案と第2案は、泊3を動かす為に電気事業を行うという手段が目的化している(犬のしっぽが犬を振り回す)思考によるもので、結果として辻褄合わせの為にあり得ない想定を積み重ねているのです。故に私は、「宇佐美氏の乾電池エクセル」と呼称するのです。  同様の指摘は既に神戸大学の牧野淳一郎博士(@jun_makino)も繰り返しその誤りを指摘されていますので、そちらもご参照ください。(参照:牧野の公開用日誌9月12日)  きわめて基本的な誤りですので工業高校卒業生や高専3年生ならすぐに誤りに気がつくと思います。  宇佐美氏は更に“追記;この記事を書いた動機についてだが、私は「泊原発を動かせ」という気はない。それは最終的には道民が決めることだ。ただこの機に乗じてデマを広げようとする人が許しがたいだけだ。“と述べられています。宇佐美さん、あなたは、鏡を見ておられるのですよ。
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多重防護の原則を無視した「所内単独運転」
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