敬老も嫌老もいらない。より深く知り合える世代対話の日を

高齢者と若年層を引き離す核家族化

 内閣府の「高齢社会白書」によると、‘17年の日本の高齢化率(全人口のうち65歳以上の比率)は27.3%に達している。4人に1人は高齢者の時代だ。WHOの指標によると、高齢化率7%が高齢化社会、14%が高齢社会、21%が超高齢社会となる。日本は超高齢社会の基準を‘07年に突破しており、いまだによく耳にする「高齢化社会」はとっくに通過している。  それだけ高齢者が増えているにもかかわらず、むしろ彼らが遠い存在になっているのは一般的な家族構成の変動が関係している。  厚生労働省「国民生活基礎調査」にある世帯人数の推移を調べると、6人以上の大家族の戸数は‘50年代から急激に減っており、‘60年代には核家族タイプ(4人世帯)や単身世帯にも逆転を許しているのがわかる。サザエさん一家やちびまる子ちゃん一家のような三世帯住まいは、この頃からすでにスタンダードの座を失っていたわけだ。

厚生労働省「国民生活基礎調査」‘53年〜‘17年までの世帯人員別にみた世帯数の構成割合

 戦後まもなくして興った高度経済成長は、働き盛りの若い世代を都心に集めると同時に、地方の過疎化を進行させた。そして夫婦と子供の最小単位で暮らすスタイルが主流となり、代々から続く家に三世代で暮らす昔ながらのスタイルは後塵を拝するようになった。  三世代住まいでなくなると、若い世代と高齢世代の接する機会が大幅に減る。日常的に食卓を囲んだり、愚痴を含む世間話をしたり、互いの生活習慣に折り合いをつけたりといったことが次第に世間一般のことではなくなっていき、別世代の日常がどんどん見えにくくなっていく。  実際、‘70年代後半の核家族家庭で生まれ育った筆者にとって、父方と母方の祖父母は盆と正月の帰省時に会うだけの存在だった。「おじゃまします」と敷居をまたぐと、ハレの日モードになった祖父母が笑顔で迎え入れてくれる。そして、こちらの近況を軽く話したり、お年玉をもらったりという程度の浅い交流しかしないまま滞在時間が終わって、「さようなら」する。  そうこうしているうちに、祖父母は皆この世を去っていった。それぞれがどういう考えを持っていて、どんな生活をしていて、世の中のことをどう思っていたのかなんて、ほとんど知らない。記憶の片隅から祖父母を引っ張り出してみると、とても解像度が低くてペラペラしている。この環境が世のスタンダードとは思わないが、多かれ少なかれ近い感覚を持っている人は少なくないと思う。
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経済効果も少ない敬老の日
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