このモチベーションファクターが同じ人同士はコミュニケーションがしやすいし、お互いにストレスが生じにくい。しかし、モチベーションファクターが異なる人同士は、コミュニケーションの際にストレスが生じやすく、ひいては、ハラスメントが発生しやすくなるという相関があるのだ。
例えば、自律裁量型のメンバーにリスクが気になる安定保障型の強いリーダーが、あれをやったか、これをやったか、あれをチェックするぞ、これを確認するぞ……。そのようにマイクロマネジメントしてしまうと、リーダーとしてはよかれと思って声をかけても、メンバーからは「うるさい!ほっておいてくれ!」とストレスが高まる。自律裁量型のメンバーには、「任せます」「やりたいようにやってみて」という言い方をすれば、意欲が高まりやすい。
反対に「任せる」といった言い方を安定保障型のメンバーにしてしまうと、「上司として世話を焼いてくれない」「私の心配をわかってくれていない」と、不満を抱かせてしまう。
リーダーは自身のモチベーションファクターが何であれ、メンバーのモチベーションファクターに合わせた指示、指導、フォローの仕方をすればよいのだ。その技術を身につけることは簡単にできる。そして、それこそがハラスメントを未然に防ぐ方法なのだ。
報道されている言動を分解してみる限り、善い悪いではなく、地位権限型の塚原夫妻が、安定保障型の宮川選手に合致していないコミュニケーションをしていることが、今回のパワハラ問題の根源であるように思えてならない。
【山口 博(やまぐち・ひろし)】グローバルトレーニングトレーナー。モチベーションファクター株式会社代表取締役。国内外企業の人材開発・人事部長歴任後、PwC/KPMGコンサルティング各ディレクターを経て、現職。近著に『
チームを動かすファシリテーションのドリル』(扶桑社、2016年3月)、『
クライアントを惹き付けるモチベーションファクター・トレーニング』(きんざい、2017年8月)がある