岐阜市の病院で、エアコンが故障した病室に入院していた80歳代の患者4人が、8月26〜27日にかけて相次いで死亡した。熱中症の疑いも指摘されているが、病院長は、「エアコンが嫌いな人もいて、亡くなった4人は(部屋を)移動しなかった」と発言した。この病院のケースは極端かもしれないが、暑くてもエアコンをつけることを嫌がる高齢者は多い。
なぜ高齢者はエアコンを使わないのか? その理由のひとつには、高齢になると温度を感じる機能や体温を調節する機能が衰えることが関係している。反応が遅いためエアコンをかけっぱなしにして、気づいたときには体が冷えきってしまい、不快に感じてしまうのだ。また、暑さも感じにくいのでそもそもつけたがらない。気づいたときには熱中症になっている。
別の理由は、エアコンが家庭に普及したのは1970年代後半からで、高齢者の中には「贅沢品」「電気代が高い」というイメージを持っている人も多く、暑くてもガマンしてしまうことが挙げられる。
しかし、実際には「贅沢品」でもないし「電気代が高い」というのも幻想だ。家庭で熱中症になり救急搬送された人の6割が高齢者であることを考えると、そのままにしておいていい問題ではない。
「エアコンが苦手」と感じているのは高齢者ばかりではない。男女720人を対象にした空調メーカーによるアンケートでは、「夏場のエアコンによる冷房は苦手ですか?」との質問に、54.9%が苦手と回答している。女性は64.7%、男性でも44.8%が苦手と答えた。(ダイキン「夏場のエアコン利用と健康管理」に対する意識調査2012年より)
確かに、電車やオフィス、店舗など人が大勢集まる場所では、エアコンの設定温度を必要以上に下げるケースが多く、外が猛暑でも中は寒く感じる。その温度差を何度も繰り返すことで、体調を崩しやすくなる。
オフィスで働く男女1000人を対象にしたアンケート調査では、オフィスの冷房が寒いと感じたこのある人325人の中で、女性の約8割(79.5%)、男性でも約7割(70.8%)が、冷房の寒さが原因で体調を崩したことがあると回答した。冷え性の女性がエアコンの風を苦手としているイメージがあるが、実際には男性も冷房で体調を崩している。
また、夏場のオフィスでもっとも不満に感じることは、暑い場所と寒い場所ができる、いわゆる「温度ムラ」だった。これも、エアコンが嫌われる理由の一つだ(いずれも三菱電機ビルテクノ・サービス「夏のオフィス環境に関わる意識と実態調査」2017年より)。
猛暑から命を救うにはもはや欠かせない存在のエアコンだが、一方ではこのように「嫌われ者」の面もある。私たちはエアコンとどう向き合っていけばよいのだろうか?